ラノベ感想:え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか? 2

読書,お仕事,ライトノベル,ワンオペ解雇,下城米雪

SNSのXでおすすめされて気になって読んだコミカライズが気に入り、原作に手を出したのですが、1巻と同時に2巻も買っていたので続けて読みました。ちょっと方向性が変わりました。

あと、この手のものにありがちですが、もはやタイトル関係ない。ま、最終的に元の会社に戻るならタイトル変える必要ないかもですが、そういう流れでもなさそうだし。知らんけど。

あらすじ

無事にイベントを終了した佐藤愛。しかし、自分の夢が何かを考え始めてしまう。自分にとっての夢とは何かを求めて、彼女は鈴木健太の提案に従い、AI世界で有名な実業家に面会を求めるが…。

自分探し…あったよね、な2巻目

ラノベ各社の賞に応募した作品などでよくある「1巻で完結する話だったけど…」をまさに体現したかのような展開にびっくり。もはやタイトルは関係ないし、1巻でやってた「真のプログラマ塾」も関係なし(いや、健太たちが続けているのですが)。主人公の佐藤愛の自分探しとともに、作品自体が自分探しに行ってしまった印象。その辺はあとがきにもちょっと書いてありましたが…

夢ってなんですか

大人になると真面目に語るのが恥ずかしくなるのが夢。仕事に追われてる時には忘れてるんですけどね。そんな感じで、ワンオペで社内システムを回していた職場を解雇されて幼馴染のベンチャーに拾ってもらってプログラマ塾の講師をやっていた佐藤愛は、一息ついたところで夢を求めてしまう。これ、劇薬です。いわばパンドラが開けた最後の箱に残っていた希望と同義。

自分よりも少し若い世代では「自分探し」なんてものが流行ったりしました。せっかくバブル後に苦労して就職したのに「自分に適した仕事なのか?」とか悩んで辞めてしまったり。バブルやその前の高度経済成長期にはとにかく何か仕事に就いて仕事に自分を合わせるという考え方だったのが、バブルが弾けて「自分」に合った仕事を探そうというのがトレンドになった時代。まさに佐藤愛がそんな感じに陥ってしまいます。なんか夢を持たないといけないんじゃないかという強迫観念に囚われてしまった感じです。

実際には住めば都なんですけどね。頭であれこれ考えるよりもやってみる。それは愛自身が受講者に伝えてきたことなのに。

人外は人外を呼ぶ

オルラビシステムという厨二っぽい盛り盛り設定に比例してちょっと人外な存在になりつつある我らがヒロイン、佐藤愛さん。彼女が自分探しを始めると次々と彼女と似たような人外たちが現れます。まるで少年誌のバトル漫画のインフレ状態。

盛り盛り設定以外は割と現実に目を向けていた1巻とはかなり様変わりしています。何しろ、出てくる人物が概ね盛り盛りの高スペック設定なんですから。1巻は勇者パーティからの追放物の現代版みたいな内容でしたが、今回は勇者パーティが出来上がる話という感じ。そういう点では1巻で培ったイメージを全てぶっつぶしているわけで、著者は勇気あるなぁと思います。

ちょっと不器用な人たちが集まって世界を驚かす(のかもしれない)

ここまでなんか貶しているかのようなことを書いてますが、個人的には十分楽しんでます。ただ、ちょっと読む人を選ぶかな?という気も。俺TUEEEでもざまぁでも、ファンタジー世界だからこそ「まあ、そういうご都合展開もあるよね」という部分があるかと思います。

しかし、本作はまんま現代(まあ、ちょっとOパーツが紛れ込んでる気もしますが)ですので、荒唐無稽さが強調されてしまいます。個人の事情ですがなまじシステム開発や運用のことを知っているので、その辺のアラはすごく見えてしまいます。

ただ、それを補ってあまりあるほど佐藤愛というキャラクターが気に入っています。現実に接点を持ちたいかは別として(だって面倒そう)。これも一種の俺TUEEE願望なんでしょうか。

今のところは普通人に見える鈴木健太以外は皆多かれ少なかれ特殊な事情と才能があり、能力は高いがそれ故に社会からはみ出している感。そんな一癖あるはみ出し者たちが集まって、何かをしでかそうとしている感があって、勇者パーティの次の冒険が気になってしまいます。

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