ラノベ感想・俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていたIV

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ゲームの中らしき世界に転生する話は色々ありますが、珍しくストラテジー系ゲームに転生する本作品。あくまでゲーム内のプレイヤーとして天下統一を狙うというのも異世界ものの中ではやや異色な作品です。一領主の立場からいよいよ建国まであと一歩のところまでやってきました。

あらすじ

ナルヤ王国軍とフラン・バルデスカをなんとか退けて新天地を得たエルヒン・エイントリアン。古代王国の末裔であるエイントリアンによる王国建設まであと一歩まで来たが、そのための障害が旧主であるルナン王国の流れを汲む南ルナン王国。

そして、反対側には大海軍を持つ強国ルアランズ王国が控えている。そのルアランズ王国がクーデーターによって軍国化することを「識っている」エルヒンはそれを防ぎ、なおかつ海軍力を手に入れるために動き出す。

飛躍に向けての準備期間の第4巻

結局はスキル無双、と前の方の巻の感想で書きました。前巻はスキルや古代王国の遺産頼りの感が強かったのですが、この巻はあまりスキル頼りを感じさせないようになってきたかと思います。もちろん、スキルを使わないとどうにもならない局面はいくつかあったのは確かですが、純粋にエルヒンがどう動くか、それによって周囲がどう動くか、という部分が前の方に出てきて、ようやくストラテジーっぽくなってきたかと思います。

ルアランズ王国の民にとってはどうだったのか

今回の話の7割くらいを占めてる感があるルアランズ王国でのクーデター話。この時期に領主不在の期間がこんなに続いて大丈夫なのかとやや心配になります。それだけの収穫はありましたけど。

今回一番割を食ったのがルアランズ国民でしょう。どのみちクーデターは起きたにしても、本来の首謀者は野心家であってもそれほど悪政を敷いたわけでもなさそうなので、エルヒンがちょっかいを出したことによって酷い目にあったと言えます。挙句、後で帰って来られるのかもしれませんが、少なくとも一時的には生まれ故郷を離れる羽目になります。エルヒン=”俺”による天下統一してゲームクリアしたいというエゴの犠牲者です。もちろん、自分もゲームの中ではこの手のことをすることもあります。ただそれはゲームだと思ってのこと。「リアル」を感じる世界の中で所詮はゲームと割り切ってここまでのことができるかというと自分には難しそうで、”俺”はすごいなと感じます。

ちなみにコミカライズも始まってますが、こちらの”俺”はかなり歪んでるように感じます。同じ主人公ですが、挿絵しかないのとコミックではまた感じ方も違ってくるよう。特に、原作ラノベの方は顔芸はしませんから。

エルヒンの一人舞台

スキル無双では無くなったとはいえ、今回はエルヒンがルアランズ王国に潜入するというストーリー上、エイントリアン側はほぼほぼエルヒンの一人舞台。前巻までの敵軍師との力比べという面もなく、いかにエルヒンが状況を思うように動かすかという話になってきます。1番の要因はルアランズ側で棚ぼたで実権を握った彼があまりに小物すぎたことでしょうか。その分、南ルナン王国を巡る話はちょっとストラテジーっぽくなりましたが。

そういう意味でも面白かったのは終盤のフラン・バルデスカとの再会でしょうか。どういう立場で出会って、どういうストーリーが進むかは読んでのお楽しみですが、やはり話が通じる相手というのは得難いなと再認識させるエピソードでした。今のエイントリアン側は戦略面ではエルヒン頼りが過ぎますので。今回、各方面の人材を確保できたのは大きいですが、一領主ならともかく1つの独立国、しかも、天下統一を目指すにはまだまだ人材不足が続いているので、今後どう展開させていくのか楽しみです。

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