ラノベ感想:本好きの下克上 貴族院外伝 一年生

読書,ライトノベル,本好きの下剋上,異世界,香月美夜

サブタイトルつけると長すぎるので外してます。正しくは 本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 貴族院外伝 一年生です。ローゼマインが貴族院の一年目を過ごしていた際に、その裏で起こっていたことを綴った短編を集めた外伝になっています。

通常、外伝や番外編はあまり読まないのですが、Kindle Unlimited対象になっていたので読んでみました。裏話もあって、本編の補足にもなるので、やはり読んだ方がよいですね。ただ、短編集は2巻目が出ましたが、貴族院外伝の二年生以降は未刊行です。

あらすじ

一年が終わり学生が去った貴族院。貴族院図書館の司書であるソランジュは静かな図書館でこの1年のことを振り返る。政変で他の司書が去ってから1人で過ごしてきた図書室に、魔術具であるシュヴァルツとヴァイスが活動を始め、図書館や貴族院の運営にも様々な変化をもたらした一年。そんな刺激的な事態を招いたのがエーレンフェストの領主候補生であるローゼマイン。

その彼女が起こした数々の事態を、他の関係者の視点から描いた貴族院外伝 一年生編。あの時、周りではこんなことが起きていた、彼や彼女はこんなことを考えていた…という一冊。

一年を駆け足でたどる外伝

第四部のI〜IIIでローゼマインが引き起こした数々の事件の裏で、誰が何を考えていて、裏で何があったかを記した外伝。3冊分を一気に遡る上、本編の話は前提として特に触れられないので、すでに第四部の終盤にさしかかっている時期に読むと思い出すのも大変。まあ、細かいことは忘れてとりあえず楽しみました。

意外にまとも?ルーフェン先生

この外伝では11人の視点で、18の物語が語られます。プロローグとエピローグのソランジュを除けば10人16話です。その中でも一番印象に残ったのがルーフェン先生の話、「素晴らしきディッター」です。

ルーフェン先生といえば、なんでもディッター、とにかくディッターのダンケルフェルガーの中でもほぼトップに近いディッター馬鹿。本編ではお騒がせキャラとして描かれています。まあ、もっとお騒がせなハイスヒッツェと比べれば、一応中央所属の貴族院教師であるルーフェンの方がまともそうに描かれてますが。まともそうと言っても、貴族院の教師って結構一癖も二癖もある人や、領地贔屓で問題行動を起こす人も多いので、まともと言ってしまってよいのか悩むところではあります。

そんな、愛すべきディッター馬鹿ことルーフェン先生。この外伝では1話しか彼メインの話はありませんが、なるほどそんなことを考えていたのか…と感心してしまいました。ま、本編の扱いがアレなので後付けかもしれませんが。

ネタバレを避けるためにこれ以上詳しいことは書きませんが、正直、見直しました。と言うか、逆にルーフェンと対立することになった彼の株が下がった気はしますが、最後にはちゃんとどうすべきかを考えて決断したので、まあよしとしましょう。と言うか、ダンケルフェルガーを実際に支えているのは女性陣だよなぁというのが読後の感想。今回は女性陣の出番がなくルーフェンがきれいに決めたので見直した次第です。

この辺り、ダンケルフェルガーって九州のイメージがします。特に薩摩(鹿児島)辺り。九州男子を立てつつ、実は彼女らが支えていないと力を発揮できない九州女性のイメージがしています。

想像以上に…だったトラウゴット

あと気になったのはトラウゴット視点の「予想以上にひどい罰」でしょうか。

ダンケルフェルガーとエーレンフェストのシュヴァルツとヴァイスをめぐっての宝盗りディッターで独断専行して処分されたトラウゴットの話。

自分のしでかしたことの重大さや、課せられた事実上の解任という処分の重大さを理解できなかったトラウゴット。ただ、彼の自業自得とは言え、彼をそう育てた周囲の問題でもあるのですよね。ある意味失敗で学ばなかったヴィルフリートやコルネリウスとも言えるかも。もっとも、ヴィルフリートはこの外伝でも色々と不満を持っており、後の本編での問題につながるのですが。ヴィルフリートについては、本人の問題以上に、側近の問題がありそうですけど。

まあ、子供にしろ部下にしろ、人を育てるのは大変ですよね。

ユルゲンシュミット全体か、エーレンフェストだけなのか分かりませんが、この世界って結構人を育てるのが下手な感じがします。フェルディナンドは自分が優秀すぎて、そうでない人の気持ちがわからないと言うか、教えるの下手ですよね。ローゼマイン(麗乃)はもともと大人な上に、読書で雑多な知識の詰め込みに慣れている?「継母の連れ子が元カノだった」とか、読書家(特に濫読派)が雑学に強いのはあるあるネタですね。そんなローゼマインだからフェルディナンドのスパルタについてこれましたが、普通は無理ですよね。特に権力者である領主候補生が性格や素行に問題があると、ディートリンデやかってのヴィルフリートの様に、どうにもならないことも多い感じ。そう言う点では、側近教育こそが重要なのかも。

ヴィルフリートはローゼマインにゲヴィンネンで勝てるのか?

ヴィルフリートやオルトヴィーン視点で語られたゲヴィンネン。魔力を使った卓上ゲームのようです。ヴィルフリート視点の中で、これならばローゼマインに勝てるのではないかという独白がありました。さて、実際のところどうなのでしょうね。
(ローゼマインがフェルディナンドからゲヴィンネンを教わって、ヴィルフリートどころか、ジルヴェスターにも無双するというSSがありますが…。カルステッドはなんとかローゼマインに勝利。なお、本編ではジルヴェスターはフェルディナンドに負ける)

ゲヴィンネンの細かいルールや戦略性などが不明なので、ゲヴィンネンがどういう人物が強いのかわかりません。が、少なくともフェルディナンドはゲヴィンネンでも上級者らしいです。では、その弟子であるローゼマインも強いかどうかはこれまた不明。ローゼマインはダンケルフェルガーとの宝盗りディッターでは奇策を用いて勝っているので、戦略的思考もできそうです。が、所詮は現代の本好きの若い女性ですから、この手のゲームが得意かどうかは。ただ、魔力量がゲームの強さに与える影響が大きいならば、魔力量が高いローゼマインも強いと言うことに…。

まあ、イメージ的にヴィルフリートは例によって根拠なく、ゲヴィンネンは男のゲームだからローゼマインより自分が強いと思っているだけ、という線が濃厚には感じます。

今後

本編はあと2巻。短編集1はUnlimitedで既読のため、本編以外では短編種2が今の所未読。ただ、まだUnlimited対象ではないため、いつ読めるかは未定。本編終了後に、外伝や短編集は出るのですかね?短編集の1冊くらいは出そうですけど。

公式サイト

既刊感想

一応、既刊の感想を書いた駄文のリンクを置いておきます。