ラノベ感想:サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと

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以前から気になっていた作品ですが、Kindle Unlimited対象となっていたので読んでみました。先日読んだUnnamed Memoryに続く魔女がメインの作品です。どちらも実力は高いのですが、自信という点では正反対の主人公の物語です。

あらすじ

王国の魔術師の中でも最高峰の7人である七賢人に最年少で就任し、多くの被害を出す竜をも単独で討伐できる力を持つ、「沈黙の魔女」ことモニカ・エヴァレット。その名の通り、唯一、詠唱なしで高度な魔法を行使できる強力な魔術師だが、実は極度の人見知り。無詠唱も「人前で詠唱するのは無理」という身も蓋もない理由。

そんな魔術と数学以外はダメダメなモニカに、同僚のルイスからある依頼がくる。その内容は王からの依頼で護衛を頼まれた第二王子が居る学園に潜入し、代わりに護衛をしてほしいというもの。しかも、正体は隠して。

果たしてモニカは無事に護衛の任務を果たせるのか?それ以前に、同年代の学生が集う学園で無事に過ごしていけるのか…。

ミステリ要素も加えたモニカの成長物語

ミステリ要素があるのでそこが売りなのかと思ってましたが、Wikipediaにある解説によると「ミステリの要素や派閥争いといった側面はストーリーを面白くさせる要素に過ぎず、本作の主軸は主人公・モニカ・エヴァレットの成長ドラマ」だそうです(wikipedia:サイレント・ウィッチより)。

無自覚系俺TUEE作品?

主人公であるモニカ・エヴァレットは自己肯定感がめちゃくちゃ低いヒロインです。自己の才能のことを「呪い」と言っており、過去には色々あったようです。現代で言うと何らかの生きづらい要素を抱えつつ、特定の方面で高い能力を発揮する芸術家とか学者タイプでしょうか。彼女の場合は魔術と数学になります。人見知りで普段はオドオドしているくせに、1巻終盤の黒幕との対決では、黒幕の自称美しい魔術にブチギレてかなりエグいことをするくらい、見境がなくなる困った人物。

自分のことは七賢人に補欠で合格したと思い込んでいるようですが、同僚で同期で七賢人になったルイスはそこに疑問を持っています。まあ、補欠と言っても七賢人は七賢人だし、仮に欠員が出たからといってじゃあとりあえず数合わせしておくかーなんてことにはならないだろうことは本人も心の奥底では理解していると思うのですが。

ミステリ要素

最初に書いたようにミステリ要素自体は話を面白くするための味付けに過ぎないようです。ミステリ風学園青春成長物語なのでしょうか。

そのせいもあってミステリと言うには、正直ちょっと強引だなと思っていたのですが、Wikipediaの解説を見て合点がいきました。だって、色々ツッコミどころがあるのですから。

囮で黒幕を誘う場所が校舎のすぐ裏

物語の中盤で事件が起こります。これ自体はフェリクス王子が自らを囮として事件の黒幕を誘き出す作戦。で、そのために「人気のない裏庭にフェリクスが一人で居る」ことで黒幕を動かそうというのですが…。

ただ、その場所は校舎のすぐ裏で教室のバルコニーから植木鉢を落として当たるようなところ。うーん、人気は少ないかもしれませんが、まったくないようなところではなく、それなりに他人の視線がありそうな気がするのですが。それで囮になる?

本気でフェリクス王子の身を狙う様な相手だったら、誘いに乗ってこなかった様な気はします。

仮にも王子の護衛が抜け過ぎてないか

3人居るとは言え、一国の王子ですよね?王子自身の思惑があるとはいえ、護衛役一人で人目のつかないところに行った挙句、危うく怪我をするところ。王子自体は魔法は使えないらしいですが、ほんとうにつかえないのかはわかりませんし、なんらかの防御用の魔道具を持っているので問題ないのかもしれませんけど。
ただ、その護衛が囮捜査しているところにお誂え向きにモニカが現れて注意を削がれたとは言え、実際に襲撃を意図していた人物の存在どころか、犯行にも一切気付かずにモニカに助けられるという体たらく。それで護衛役が務まるのか…。

そもそも式典会場での事件があった後でのこれですからね。と言うか、あんな杜撰な犯行で犯人が捕まってないというあたりが信じられないところです。しかも、犯人自体は捕まる前提であった感じなのに。その辺は真の黒幕の介入があったのだと解釈しておきますけど。

そもそも七賢人とは?

王国最高峰の魔術師であり、例え貴族でなくても貴族扱いになるらしい。モニカも七賢人であるため扱いとしては伯爵待遇だそう。この王国では公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の5つの爵位なので、割と上位の扱い。公爵は王家の血縁者と思えというルイスのセリフがあるので、実質貴族としては上から2つ目の地位。

ただ、この七賢人が何のための制度かよくわからない。単なる名誉職かと思いきや、モニカの元に様々な資料が仕事で回ってくるあたり、実務も色々ある模様。ただ、回ってくるのが各種統計情報とか財務情報らしいので、それ魔術師の仕事?という疑問も湧いてきます。魔術だけでなく色々な学問も修めた王の相談役的立場かと思えば、モニカは数学と魔術以外はからきしだし、そもそも七賢人の選定は面接と魔法攻撃の実戦ですから。

その選考基準から見れば軍事力を期待されているようなのですが…。正直、使える魔法は高度で強大だとして、軍事力になり得るのかどうか。相手が魔物であれば躊躇はないようですけど、どうも魔王的な存在がいるわけでもないようですし。他の七賢人はそれなりに公の場に出て認知されているのに対して、王国の秘密兵器扱いなのかもしれませんが。何にしても、七賢人の実態があまり見えてこないのですよね。巻が進めばもう少し見えてくるのかもしれませんけど。

今後

さて1巻はUnliimted対象で読んでみたのですが、2巻以降は現時点ではUnlimited非対象。面白いとは思ったものの、買って続きを読むかどうかはやや微妙。人気が高いと聞いていたのちょっと期待しすぎたのかもしれませんが、自分にはあまり合わなかったようです。

まだ物語の導入部分ですから、続刊を読んでいけば印象も変わるのかもしれませんが…。

他に読みたいものもあるので、少し様子見して、Unlimited対象になるか、買って読みたくなるまで待ってみることにします。

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