ラノベ感想・俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていたII

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悪徳領主エルビンこと「俺」の戦いは新たな戦場へ。 今回は突撃王女ユラシアの祖国、ロゼルンに隣国ブリジトが侵攻。エルヒンは王も渋る援軍を買って出ます。それも全ては野望のため。兵力も練度もまさる敵軍に対して士気最低の連合軍。彼はどうやって敵を退け、返り討ちにするのか?

あらすじ

強国ナルヤを撃退し、束の間の平和取り戻したルナン王国。しかし、天下統一を目指す悪徳領主エルヒン(俺)は経験値を得てレベルアップするためにも戦場が必要。「ゲーム」の歴史を知る彼は次なる戦場となるロゼルン王国救援を名目に、人材探しと経験値獲得のために国王に同盟軍派遣を進言する。

しかし、ロゼルン王国軍は領地を次々と陥され、そもそも戦う気のない貴族も、一方的に虐殺されるままの領民も士気は最低。王国内の他領からの援軍もない孤立無援の1万。頼みのルナン遠征軍も精鋭とは言えない3万で士気も練度も高くない。一方のブリジト侵攻軍は士気も練度も高く、兵力も6万。

この劣勢の中、世界で唯一ゲームの歴史を知り、システムを知り、レベルアップができるエルヒンの秘策は?

悪徳領主の面目躍如の第2巻

前巻で強敵を退け一息ついたものの、天下統一のためには休んでいる暇はありません。次なる戦場は前巻でも顔見せしたユラシアのロゼルン王国。隣国ブリジトは精鋭の兵を持ち、3剣士と呼ばれる武将もいる中堅国。本来ならロゼルンの後ろ盾であるルナン王国の存在により侵攻など難しいが、ルナンに余裕がないと見て動き出します。

迎えるロゼルン、ルナン連合軍は練度も士気も低い寄せ集め。という構図は前巻と変わらず。違いはエルヒンがそれなりに権限をもった総大将としてルナン王国軍を動かせること。

「悪徳領主」とは

エルヒンの「設定」は家臣、領民に対し悪虐非道の悪徳領主でしたが、当然、「俺」になってからはそういう意味での悪徳領主ではありません。

ではどこが悪徳かというと、本来の主筋にあるルナン国王や王国に従う気など全くなく、天下統一を狙っているところでしょうか。国王やその側近の伯爵に従っているふりをして、その実は面従腹背。今巻のラストでも自分しか知り得ない知識を使って国王たちを出し抜いています。
また、野望のため善政と呼んでもよいような政策を行っているものの、とどのつまりは自分の天下統一の野望のため、というあたりも「悪徳」でしょうか。

そういう「悪徳」ぶりがなかなか面白い。「俺」もその辺の自覚があるようです。そういう悪徳ぶりで天下を統一するのか。しかし「ゲーム」の世界の住人たちとのつながりを深めることで情を通じてしまうこともあります。それが「悪徳」に影響するのか、しないのか。今後、「俺」が戦略上も、人としても、どういう決断をしていくのかを楽しみにしています。

気になる点

戦略が肝なのに、結局はスキル頼みの無理無茶無謀を繰り返しているあたりがやや残念。もっとも、主人公自身がそう言っているくらいだし、確かに現時点では多少の無茶をしないとどうにもならないのは確か。ことがそんなにうまく運ぶ訳がないという点ではリアルとも言えます。

結局、エルヒン、ジントが無双するところにユラシアが加わるくらいで、あまり前巻とは構図は変わりません。人材補強もしなければならないはずですが、そこもあまり進捗はありません。まあ、ユラシアの信頼を得たことは大きいかと思います。

ストラテジーゲームには扱う戦場の規模、動かす兵力の規模に応じて、戦略級、戦術級、作戦級という区分けがあります。本作は設定等から戦略級を期待してしまうのですが、戦術級ないし作戦級に終始しているあたりが個人的には残念なところです。最初からそうゆうものだと思えばこんなところかと思うのですが、変に期待させて裏切られるとちょっと…。まあ、勝手に期待しただけなのですが。

そんなことを書きつつも、最初から天下統一を前提として進める物語にはとても期待しています。エルヒンが最前線に立たない戦場をどう描いていけるかが肝になるかなと思っています。

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