ラノベ感想:リビルドワールドII <上> 旧領域接続者

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コミカライズは買ってますが、原作の方はkindle unlimited頼み。というわけで、II<上>巻(通算3巻)からV巻(通算8巻)までがunlimited対象になったので、およそ1年半ぶりに続きを読みました。

あらすじ

アルファのサポートの元、無理無茶無謀な戦いから生還したアキラはハンターとしての実績を側から見れば異常なペースで上げていく。そんな中、新しく入手した情報収集機器の訓練で訪れた遺跡でアキラにしか見えないメイド服姿の女性に遭遇。アルファによってかなり強引にその場から離脱させられ不満を持つアキラに、アルファは彼が旧領域接続者であること、そして、それを知られることで生じる生命の危機にも繋がりかねない事態について語る。高価で取引される旧世界の遺物と同様、旧領域接続者も計り知れない価値と、それに伴う危険があることを…。

良くも悪くも悪運がトラブルを引き寄せる

ChatGPTなどのAIが自然な文章を生み出すことが話題になっている昨今。本作はWeb版が2017年、書籍版が2019年からの作品。いくつもの高度な文明が破綻を繰り返してきた世界のスラムで育った少年アキラは、無謀にも拳銃一丁で遺跡へ向かい、そこでたまたま仮想現実の美女、アルファと出会う。彼は旧文明の情報ネットワークに接続できる旧領域接続者だった。

現在の文明よりはるかに優れた旧世界の仮想的な存在であるアルファは、ある目的を持ってアキラに「取引」を持ちかける。その契約内容は、ある高難易度の遺跡の攻略。その報酬としてアキラがその遺跡を攻略できるだけの力を得るための手助けを行う。とてつもなく怪しい契約だが、生きることも難しいスラムで後のないアキラは契約を結ぶ。

こうして、仮想現実の美女とスラム育ちのただの少年のバディがハンターとして成り上がることを目指して活動するというのが「リビルドワールド」のお話。現在、II<下>巻の途中あたりまでコミカライズが進んでいます。

意外に抜けてる?アルファの思惑は?

アルファについては明確にはあまり語られていません。旧領域のネットワークの仮想的な存在であるのだろうということだけ。今巻で一口に旧世界と言っても1つの世界のことではないことが明かされています。おそらく大元の高度に発達した文明があったようですが何らかの問題で滅亡。その滅亡した旧文明の遺物を利用して発達しては、同じように滅亡するということを何度か繰り返して現在のアキラたちが暮らしている文明があるとされています。

アルファについてはAI的な何かかと想像できますが、そうだという明確な記載はないので、具体的にはどういうものかわかっていません。BEATLESSやユア・フォルマみたいなAIを搭載したアンドロイド的な何かではなく、あくまで仮想的なもの。ユア・フォルマでは今でいうスマホやPCにあたるものが頭の中にある感じですが、そこで動くアシスタントAI的な何かだったのでしょうか。

そんなアルファの性能はかなり高いらしく、モンスターの行動から飛び交う弾丸や砲弾などの軌道計算、果ては目の前の相手が嘘をついているかなどの心理面まで、何でも計算できてしまうくらいの演算力を持っています。そんなアルファですが、スラム育ちで他人との距離感が極端なアキラの心理をコントロールするのはなかなか難しいよう。今回もアルファの見込みの甘さのせいで、危うく他のハンターと命のやり取りが始まる寸前に。そういう意味では意外に抜けているとも言えます。膨大な演算力を持ってしても、人間の感情はそう容易にはコントロールできないということでしょうか。もっとも、作中に時折現れる不穏な文章によれば、アキラの行動の観察から学習結果を着々と積み上げて、予測の精度を上げているようです。

なんとなく、どこぞの「僕と契約して魔法少女になってよ」とかほざく謎生物?と似たような感じも。アキラもアルファの499番目のバディらしいので、過去にアキラのような存在が498人居たわけですね。

アキラが運が悪いのか?

作中でも本人が諦観と共に抱いているのが自身の運の悪さ。アルファとの出会いは一見幸運なこととも見えますが、本当のところは不明。ちょっとした訓練のつもりでいてもすぐ凶暴なモンスターと出会ったり、何らかの事件に巻き込まれたり。ただ、作中でも言ってるようにそれが元でエレナやサラたちと出会ったりとか、まさに塞翁が馬。

もっともアキラを手っ取り早く成長させるための虎の穴としてアルファが誘導している可能性もあるので、何をどこまで信じて良いのか。

新たなライバルが登場?

1巻ではアキラが気になってしょうがないカツヤが登場しましたが、今巻ではそのカツヤの指揮下にあるレイナと、彼女の護衛であるシオリが登場。コミカライズで今巻よりもう少し先の話まで知っていますが、そのII<下>でもアキラたちに関わってくるのがレイナとシオリ。

本人にあまり自覚がないアキラから見ても「トラブルメイカー」扱いのレイナ。決して実力が低いわけではないようですが、自尊心が強いよう。その辺はカツヤも似たようなものかと思います。が、そのカツヤにも突っかかって負けたために従っているという経緯も。

もっともアキラは完全に自分を棚に上げているのですが。まあ、今巻の経験から、少しは対人関係に気を使うようになってきているようですけど。そもそも死と隣り合わせのスラム街で生きてきて、ハンターになってからも他人には認識できない相棒のアルファや、たまたま知り合ったエレナ、サラ、シズカ、シェリルなどの狭い人間関係しかないのですから、人間関係の構築を学ぶことも難しい状況。そりゃ極端な判断に走りますよね。

トガミって誰?

巻末短編として、カツヤたちがドランカムに入党した際のエピソードが描かれています。この中で名前が出てくる人物はカツヤとユミナ、アイリのお馴染みの3人に加えて、トガミという謎の人物が登場します。名前が出てくる以上、どこかで以前に出てきたのを忘れてしまったのかと思いましたが、調べてみると今後出てくる人物のようです。

ところで、この物語の登場人物にはアキラやカツヤのように日本人の名前っぽい人物が多いです。もちろん、エレナやサラなど日本人ぽくない人物もいますが、トガミについては日本人ぽいですが名前と言うより名字のように見えます。ただ、他にもカツラギ、キバヤシ、ヤジマなどの名字っぽい人物も居ます。何回もリビルドされた世界なので、名字と名前もいつからかごっちゃになってしまったのでしょうか。

誤植

ちょっと気になったのは誤植がいくつかあったこと。例えば第39話では「暴食ワニ」が「暴力ワニ」になってます。まあ、確かに暴力的なのでまったくの間違いではありませんが。そこまで明確には覚えてないですが、他にもあれ?と感じることはありました。

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既刊感想

2023-07-25読書SF,ナフセ,バディ,ライトノベル,リビルドワールド

Posted by woinary