ラノベ感想:陰の実力者になりたくて! 01

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感想を書いているのは2023年ですが、2022年最後の1冊。もともとタイトルの「陰の実力者」に惹かれてAmazonの読みたい本リストに登録してあったもの。それがコミカライズされていたので無料サイトで読み始めたものの、結局続きが気になって区切りの良かった8巻まで一気買い。アニメもよい感じで原作に手を出してしまいました。

あらすじ

「陰の実力者」に憧れた主人公はあらゆる格闘技を学んで鍛えるが、それだけでは軍隊には勝てないことから魔力と言われるものが必要と悟る。そのため、魔力を得るための修行を重ねる。結果として死んでしまった彼は修行の成果か運命のいたずらか、魔力のある世界に転生してしまう。

魔力のある世界でもやることは同じ。陰の実力者になるべく普段はただのモブ、下級貴族の地味な次男であるシド・カゲノーとして目立たずに。しかし、いざとなれば陰の実力者として立ち回るために、地道な修行は欠かせない。そんな趣味と実益を兼ねた盗賊狩りでの「悪魔憑き」で変わり果てたエルフの美少女、アルファとの出会いが彼らの世界を変え、本当に陰の実力者への道へと…。

正義でも、悪でもない、陰の実力者

そう本人は言ってますが、まあ、正直正義でないのはその通りとしても、人にとっては「これは悪だろ」と思えるようなことを平気でやるのがシド・カゲノー。ただ、一応作中で盗賊狩りについては、この世界では悪事にはならないよう。カゲノー家はその地方の領主ですから、盗賊を討伐する側(もっとも、付近の盗賊を狩り尽くして遠征していたりするので、他領にも出向いていると思われるので越権行為かと。しかも、1巻後半で出てくるローズ・オリアナを助けているので、明言されていませんが隣国まで行っている可能性も)。

まあ、ちょっと怪しい部分もあるし、現代基準ではアウトな感じもありますが、中世的なこの世界の常識ではそれほど悪というわけでもない感じの盗賊狩り。それを説明しているのがシド自身なので微妙な面もありますが、ここは信じることにしましょう。

ただ、1巻の中でも前半のアレクシア誘拐事件でシャドウとシャドウガーデンによって王都では少なからず物的な被害が出ているはず。避難していたはずなので民間人への被害は出てないことを祈るばかり。騎士団に甚大な被害が出ていそうですが、これもシャドウが動かなければ本来は発生しなかったものなのですよね。本人はあくまで盗賊団相手に「悪の教団」設定を楽しんでいるだけなのですから(おそらく)現代日本人の倫理観は転生時にどこか置いてきたのか?という感じ。

また、後半の学園占拠事件でも多数の被害が出ています。まあ、あれは教団側がシャドウガーデンを語っての悪事で、彼ら自体は民間人には一切被害は出してないですけど。現代日本人としてはその正義感、倫理観には疑問もありますが、まあ、あの世界的には悪とまでは言い切れないのは確かなよう。

単なる設定のはずが、実は真実を突いている

「陰の実力者」にたいいて異常なまでの憧れを持ち、狂気じみたストイックさで自身を鍛えるシド。その割には現代っ子的な面もあるのか、結構ドライなところも。設定としてディアボロス教団という強大な的と戦っているという話を咄嗟の思いつきでアルファに語りますが、実はそのほとんどが真実だったりします。

また、姉であるクレア・カゲノーが誘拐された件では適当に投げただけのナイフが隠しアジトを示すし、アレクシア王女誘拐事件では道に迷った結果、黒幕であるゼノンとアレクシアの闘いの場に出くわすことに。ありていに言えばご都合主義の極致。まあ、それを楽しむ作品なのでそこにツッコミを入れるのは野暮というもの。まあ、合う合わないはあるので、レビューなんかでも賛否両論のよう。

このご都合をあえて考察してみます。

陰の叡智のおかげ説

シドは究極の厨二病患者なので、厨二的な各種設定はテンプレとして網羅しています。原作では2巻以降の話ですが、アニメやコミカライズでも魔女アウロラと聖地を訪れた際に、暗号化された古代語で書かれた内容を一発で言い当てています。一種の人間ディープラーニング?

現実の世界でも全然離れた場所の神話でも同じような内容になることも多いです。人間の発想力なんてそんなものなのかもしれません。異世界とは言えある程度パターンで処理できるのかも。

実はそういうスキル説

転スラの勇者マサユキとか、当人がどんな行動をしてもそれがいい方に転ぶスキルってのは他作品でも出てくるかと思います。この世界、特にスキルというものが表に出てくることはありませんが、そういうものがないとも言い切れません。

とはいえ、ディアボロス神話自体は昔からあるものですので、その時点でなかったものが過去に遡ってあったことになる程強力なスキルということはさすがになさそう。絶対ないとは言えないものの、可能性は薄そうです。

熱いけど意外にドライ

まあ、実際のところ本人がどう思っているのやら。陰の実力者への憧れは強いものの、シドは意外とドライな面も。設定どころか陰の実力者という立場も実は存在しないと割り切っている風。だからこそ、ストイックに鍛えはするもののあくまで設定としてそういうロールプレイ(ごっこ遊び)をしているという意識。アルファたち七陰やシャドウガーデンのメンバーもそれに付き合ってくれている同士という扱い。それでよくあそこまで徹底して鍛えることができるものとはんば感心、はんば呆れてしまいます。

イプシロン推し

彼女が出てくるまではベータ推しでしたが、イプシロンの登場と、盛ってる話を知ってからは俄然イプシロン推しになりました。まあ、推しと言っても娘を見る親視線で応援してあげたいという感情です。

彼女はいわゆる「起伏のない」体型。それを気にしていますが、シドの開発したスライムスーツによって「盛れる」ことに気づきます。その一点で努力した結果、七陰の中でも「緻密のイプシロン」と呼ばれるほど、魔力制御の精緻さを極めることになります。まさに好きこそ物の上手なれ(ちょっと違うか?)。聖地の一件などでそれをネタにされたりする彼女ですが、その一途な想いはグッときます。

まあ、七陰やその他の上位メンバーはそれぞれ悪魔憑きになった後に悲惨な目に遭い、そこから救われたことでシャドウを崇拝することになった女性ばかり。そういう意味では脳筋のデルタですらその生い立ちとシャドウへの純粋な思いを持っているので、箱推ししたくなってしまいます。ある意味主役は彼女たちと思ってます。

ついでにゲームの話

アニメ化に前後してスマホゲームにもなっています。これ意外とよくできていて、原作、コミカライズ、アニメでもあまり語られていない、クレアが学園に行ってから、シドが学園に行くまでの、シャドウガーデン立ち上げ期のエピソードが「七陰列伝」として語られています。七陰メンバーが加入した経緯については多少は触れられていますが、組織黎明期の話は今のところ他ではないのでは?(原作1巻とコミカライズ8巻にはないはず)

公式サイト

2023-11-23読書ライトノベル,異世界,逢沢大介,陰実

Posted by woinary