ラノベ感想:継母の連れ子が元カノだった2 たとえ恋人じゃなくたって

読書,ライトノベル,ラブコメ,学園,紙城境介,連れカノ

タイトルが長い上にサブタイトルも長いので二重に長いラブコメ作品。Webサイト発の長いタイトルというよくある作品。元々はアニメをたまたまみて気に入り、コミカライズを見てから原作に手を出してしまうくらいに気に入ってしまいました。ま、最近自分の中ではそういう作品が多いのですが。

あらすじ

もうすぐ母の日。長いこと「母」という存在と縁遠かった水斗は無関心だったが、結女に言われて渋々連れ立ってプレゼントの買い出しに。しかし、これと言ったものを思いつかずに「二人きりの時間」をプレゼントしようということに。そのため、それぞれ「友達の家」に泊まることにしたのだが、友達の少ない二人が頼る選択肢は少なく、しかも頼りの友達二人は同じマンションの隣同士だった…。

他、中間テストでの首席を巡る争いや、水斗と話の合う女友達の登場など、2巻も素直になれない元カレ元カノきょうだいの遠回しなイチャラブは続く。

恋人と友達と

本作のテーマが何なのかちゃんと理解しているか分かりませが、別れたと言いつつ結局まるで付き合ってるかのような義理の「きょうだい」の二人に、さらに悪い意味?で「完全無敵」なヒロイン、東頭いさなの登場。何やら、何がどうしたら恋人同士で、どうだったら友達なのかを改めて考えさせられました。

進学校の部活

まずは軽く気になったところから。設定上この高校は進学校ということになっています。舞台は京都市内のようで、京都の高校事情は分からないのでなんとも言えませんが、まあ、東大に何人か行くような学校なのでしょう。知らんけど。

で、そのため部活には力を入れてないという記載があります。まあ、実際にモデルになった学校があって、そこは部活に力を入れてないのかも。ただ、今時の進学校は部活に結構力を入れてますよね?40年前は地元でも低レベルと言われていた私立高校が、今はスポーツや音楽などの部活に力を入れてます。校舎や駅前によく「○年 〇〇さん 〇〇大会出場」なんて横断幕が出てます。当時は完全にバカが行く(失礼な!)と言われてたのに、今はもう割と進学校扱いのよう。まあ、特待クラスと普通クラスみたいな区分けがあるようですが。

今時は大学や会社も単に学業の成績が優秀なだけではなくて、そういう実績みたいなものを重視する時代。その辺、進学校だから部活に力を入れてないは古いんじゃないかな。おそらく著者さんは自分よりはるかに若いはずなんで、その頃は進学校でも部活に力を入れてたんじゃないかな、とか余計なことを思ったり。

明日やろうは馬鹿野郎

ある意味無敵ヒロイン、東頭いさなの煮え切らない態度に南暁月がのたまうセリフがこれ。

「あのねぇ、心の準備なんてもんは、今できなきゃ一生できないの!未来の自分に過度な期待を寄せるな!明日やろうは馬鹿野郎だよ!」

東頭いさなは恋を知らない より

今巻で一番好きな言葉かも。

最近は会社なんかでもこういうこという上司とか多いんですよ。もはや日本もある程度の規模の企業はコンプライアンスとかうるさい時代。残業が多いとブラック企業と呼ばれdisられる時代です。もちろん、限られた時間内で効率的に仕事を進めなければいけないのは当然。でも、居るんです。

「それ、今日やらないといけないことなの?」

いや、全体の仕事量を調整して、本当に明日にしてもいいような作業割り振りをしてくれるなら別に構いませんよ。でも、結局、できなかった責任は自己責任と押し付けて何もしてくれないのにそれはないよね、と。

まあ、今時の上司は部下の残業時間が多いとその上から評価を下げられる時代なので、仕方ない面もあります。でも、作業が終わらないのは当人の責任だけど、残業が多いのは自分の責任になるからやめろってのは違うよね(もちろん、表立ってそんなことは言わないですが)。

ここで暁月みたいにかっこよく「明日やろうは馬鹿野郎だよ!」と言ってみたかったです。ま、もう辞めたので関係ないですが。

推理小説の読み方

2巻冒頭で、結女が読み終わった作品の感想について語りあいたいがために水斗に本を勧めたシーン。これがなかなかおもしろい。結女はミステリ読みなので当然ミステリ作品。その本を借りた水斗はある程度まで読み進めると突然ページをめくる手を止めます。さらに前に戻し始めて何箇所か読み返すと、天井に目を向けてぶつぶつと呟き始めます。それに対しての結女の反応がこちら。

かっ…解決篇前に推理してる〜〜〜っ!!
推理小説を本当にそうやって読む人を、私は初めて見た。

元カップルの日常スナップショット より

他人のミステリの読み方を知らないのでどちらが主流なのか分かりませんが、解決篇前に推理する人って少ないのですかね?

先日読んだ「medium 霊媒探偵城塚翡翠」でも、そういう作者が仕掛けたトラップをスルーしてしまうファンを嘆くシーン(あくまで作中人物の感想です)を見たばかりなので、やっぱりそういう人が多いのでしょうかね。

もっとも、自分もミステリを読んでいた頃から、先を読むのに夢中になってしまうのが常でした。当時のミステリは「ここから解決篇ですよ」なんて親切な導入もなかったので、結構そのまま読み進めてしまってました。ま、単なる言い訳です。

でもまあ、自分は水斗に近い濫読派よりとは思うのでよいけど(と自分を棚に上げる)、自称ミステリ読みの結女がそれでいいのか、と。まあ、ミステリの読み方なんて人それぞれですけど。

ちなみに、上に挙げた解決篇前に推理しないことを嘆くシーンがこちら。ただ、これは話している相手を煽って感情を昂らせようとしているかと思われるので、話している城塚翡翠や、ましてや著者の相沢沙呼さんがこう思っているという話ではないので要注意。

「でも、そういう人たちって、きっと世界に対して無頓着なのでしょうね。(ネタバレを避けるため中略)何にも不思議がらず、探偵が重要な手がかりを教えてくれるおを口を開けて待つばかりで、どんどん大切なことを読み飛ばしてしまう」

相沢沙呼「medium 霊媒探偵城塚翡翠」 最終話 VSエリミネーター より

まあ、自分も先を読み進めることにばかり意識を取られてしまう「世界に対して無頓着」な人間なので、返す言葉もないのですが。

作中の気になった言葉・まとめ

作中で気になった言葉がいくつかあったのでまとめてみました。何となく知っているものもありましたが、知らないものもあったので、ちゃんと調べてみました。こういうのをスルーしないのも世界に対して無頓着にならないための一つの方法かな、と。
ただ、「たしたしとLINEをいじり」というのはよく分かりませんでした。

ヴァン・ダインの二十則

アメリカの推理作家、S・S・ヴァン・ダインが語った推理小説を書く規則。探偵小説作法二十則とも。まあ、あえて破る場合もあるし、特に最近は「死体が必ず必要」を否定する動きもあります。時代によってミステリも変わります。

クレタ人のパラドックス

作中の水斗のセリフにある「嘘つきを名乗る嘘つきの話」です。ざっくり言えば「自分は嘘つきである」とい人がいたら、言ってることが正しければ「自分は嘘つき」というのも嘘になるがその発言は嘘ではない。しかし、そうすると嘘つきということが正しくないことになるという言いがかり。そもそも、嘘つきが常に嘘をつく人ということはないですよね。それで済むことをくどくどと考えること(ぉぃ)。

ヘンペルのカラス

帰納法の根本的な問題を喚起する問題、だそうです。詳しくはリンク先参照。

こんな返しを即座にできるような友達がいたら楽しいようなウザいような。でもまあ、うらやましいかも。こういうこと語る友達以前に、友達いないので。

友達とは、恋人とは

今巻のサブタイトルは「たとえ恋人じゃなくたって」です。誰と誰が恋人じゃないのか、は読んでのお楽しみ。でも、いったいどこからを持って恋人だったり友達だったりするのでしょうね。

水斗と結女の中学時代の恋愛は結女の告白から始まりました。(正式な)結婚については婚姻届の提出が必要です。しかし、何となく同棲し始めてたというのはあるのかもしれませんが、これもまあある程度ここからというのがはっきりしそう。でも、必ずしも告白とかしないケースもありますよね。知らんけど。

告白しなくても事実上の恋人同士という関係性があるなら、別れを告げてもまだ恋人同士という関係性もありですよね。

それ以上に曖昧なのが友人関係。それこそ普通は友達宣言なんてしないですし。何となく友達になり、何となく疎遠になる。
実際、会社の1年先輩(と言いつつほぼタメで話してましたが。まあ、年齢は同じだし)とはそれなりに親しいつもりだったけど、仕事の関係上世話になった人の訃報を一切知らせてくれなかったし。自分はその方やその会社とは違う仕事に移っていたのですが、その会社の方からも、その会社と仕事をしている同じ会社内のその先輩を含めた元同僚たちも誰も教えてくれなかったわけで。かなり寂しい思いをしました。自分はその会社に4年ほど出向してましたが、その際に病気で亡くなった出向先の会社の方の訃報は自社の関係した同僚にも伝えたのですが…。
いや、社内メッセージアプリのアイコンがずっとオフラインだったからおかしいな?とは思ってたのですが。それにしても、誰も伝えてくれないんだな、と。辞める当日に出社した際にたまたま会った事業部長から聞いたというオチ。
ま、こちらも辞めるにあたって彼らになんの相談もしなかったからお互い様か(出社してたら分かりませんが、基本リモートワークになってたので、会う機会もなし。そうするとわざわざチャットなりメールなりなんてしないですし…。まあ辞める話自体はコロナ禍の1年くらい前からしていたわけですが)。

それはさておき、恋人だの友達だの、曖昧なもの。側から見れば水斗と結女って十分付き合ってるように見えてそう。その辺、暁月は気付いてますよね?

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