「鎌倉殿の13人」第7回・補足

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源平合戦の時代〜鎌倉幕府成立の時代を描く大河ドラマ「鎌倉殿の13人」も第7回。安房に逃れた頼朝が和田義盛とここに居ないはずの北条義時を上総介広常に使わして味方にしようとする話。どんどん、露骨になる北条贔屓。

そのうち、北条に非ずんば人に非ずとか言い出しそうな本作について、主に三浦一族の視点で補足(ツッコミ)を入れていきます。

頼朝再起し、相模に向かう

甲斐にいるはずの義時、上総で広常を誘う

前回も書いた通り、北条時政、義時父子は石橋山で頼朝と別れて甲斐武田に援軍を要請しに行った後は、富士川で合流するまで武田と行動を共にしていたようです。

が、何故か本作は義時が安房に来て頼朝の使者として上総介広常の元に現れます。まあ、主役の義時がこの大事な時に甲斐に居て頼朝の側に居ませんでした、では様にならないためでしょう。それどころか、義時のおかげで広常が説得できたという体にしています。まあ、結局、広常はその義時の思惑のさらに斜め上を考えていたのですが。

どこまでも北条本位の鎌倉時代を描きたいようです。

上総広常とは

元々は頼朝の父である源義朝の郎党として源氏方についていましたが、源氏が負けた後は平家に従います。が、上総家の御家騒動が起こり、さらに平清盛の遣わせた家人と上総の統治をめぐって対立、平家とも対立することとなります。ですので、そもそも頼朝方に付く気はあったとされています。なお、上総介と称していますが、正式には上総権介であったとか。おそらく、正式には任官していないのでしょう。三浦義澄も三浦介を自称していますが、公式の場では三浦介とは名乗らず三浦次郎義澄と名乗っています。

結局、千葉に遅れて頼朝の元に参陣した上総介広常は劇中のように遅参を一喝されます。そのエピソードから広常は頼朝に将器を見たとされます。なお、北条家が編纂した吾妻鏡では上総介広常の兵は2万騎とありますが、実際にはもっと少なかったのではないかとされています。

これは北条家が自らの正当性を示すための吾妻鏡が盛っているようです。頼朝の覇業を受け継いだのは頼朝の子である頼家や実朝ではなく北条得宗であり、その頼朝の引き立て役として強大な勢力の上総介広常も頼朝の器に感心した、という流れです。

その上総介広常は態度が不遜ということで真っ先に血祭りに挙げられました。そのせいもあってか、源氏と平家を秤にかけていたかのような描かれ方をされて少しかわいそうです。まあ、北条に負けたものは本作ではこうやって晒し者にされます。

甲斐に追いやられる時政

上にも書いたように、富士川の戦いでは武田軍と行動を共にしている北条父子ですので、どこかで甲斐に送らねばならず、今回、使いとして北条時政は甲斐に出されてしまいました。義時も武田軍と行動を共にするはずなのですが、いつ、送り出すのでしょう。もう時政を送っているのだから更なる使者というのも変ですが。

今まで見てきて分かる通り、頼朝が北条の人間で信用しているのは妻の政子を除けば義時だけで、舅である時政の扱いは割とひどいです。そのせいもあって、時政も何やら酷い描かれようをしています。

今までも頼朝を匿って伊東祐親に大見えを切ったかと思えば、頼朝は器じゃないから首取って平家に持って行くかとか言い出したり、石橋山の敗戦後は武田方に付くと言い出したり、今回頼朝にちくちく刺されていたように、頼朝を迎えにきた船で先に安房に逃れたり(時政はこの時甲斐に居るので、本作での完全な創作です)。初代執権のはずなのに、なんかいい加減な親父扱い。このまま、時政は調子の良いおっさんで、裏で全てを牧の方が操っていたとかいう話にされそうです。

今回登場した亀の前と頼朝、そして政子、義時と時政にはその後の因縁があります。まあ、間違いなく今後描かれエピソードなので、ここでは詳細は語りません。

今日は駄目のようだ、の阿野全成

伊豆権現の政子の元に現れて、風を起こすから逃げろとか言い出す不思議ちゃんの全成(ぜんじょう)。頼朝と義経の間の兄弟で、義経と母親が同じ(つまり、頼朝とは違う)です。

以仁王の令旨を受け取って東国に向かい、石橋山の敗戦後に佐々木兄弟と出会い、相模で過ごしたのちに富士川の戦いの前に下総で頼朝と合流しています。つまり、伊豆で政子たちに出会ったというのはこれまた本作の創作かと思われます。

もっとも、義時が上総介広常の元に出向いたことよりは、まだそういうこともあった可能性はなかったとはいえないことも確かです。後に北条家とも関係ができるので、ここでドラマとして出会いの場を作りたかったのでしょう。

なお、頼朝存命中は全成のエピソードはあまりなかったりします。本作では北条と縁を持つので、今後も主にファミリードラマの面で活躍するのかも知れません。彼が歴史に再び登場するのは、頼朝の死後、「鎌倉殿の13人」の体制になってからです。

亀の前

今回、頼朝に召し出された亀の前。まるで安房で出逢ったかのように描かれています。のちに重要な役割を果たすことになりますが、一説によると伊豆時代から頼朝に支えていたとのこと。亀の前についても本作での創作が入っているようです。

別に善児みたいな架空のキャラを作ることは構わないですが、はっきりと素性がわかっている人間まで違うように描くのはどういう意図があるのか。

まあ、亀の前も反北条ですので、本作では敵方ということになります。吾妻鏡は北条家が編纂しているので、北条家に都合の良い話が多いですが、その吾妻鏡だってここまで露骨なことはしていません。その点では「鎌倉殿の13人」ははっきりと北条贔屓で、吾妻鏡以上です。タイトルに偽りありで「鎌倉殿の北条義時と12人の貶められた仲間達」に改題すべきかと思います。

え、時政?時政は後でどうなるかは、この後のお楽しみです。が、ここまでの頼朝に対する態度を見れば、今後は見えてくるかと思います。本作で悪く描かれるということは…そういうことです。後一人、本作で頼朝を悪様に言っている人物が一人いることにお気づきでしょう。これもそういうことです。まあ、義時と彼の存命中は徹底的な事態には至らなかったのですが。

北条(得宗)殿に貶められる12人

本当に北条得宗が正義で、その敵は全て貶めるというスタンスだけは貫き通す本作です。鎌倉での征夷大将軍任命の公文書を受け取るのは三浦義澄なのですが、これも北条義時あたりに奪われそうな勢いです。それ位の歴史歪曲は普通にしてくるのが本作かと思います。

どうせ、鎌倉時代のことなんて知らない人が多いので、ドラマとして面白い話になれば史実なんてどうでも良いのかも知れません。