ラノベ感想・ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います2

読書,ファンタジー,ラノベ,働き方改革,受付嬢,社畜,電撃文庫,香坂マト

すべての社畜に贈る、理不尽をなぎ倒す(物理)スーパーヒロインの物語。 1年に一度の祭に参加するため定時で帰りたい。そんな願いも虚しく徐々に膨らむクエスト受注。そして、祭りの1週間前に突如として押し寄せる冒険者たち。アリナは果たして定時退社して祭りを堪能できるのか?

あらすじ

魔神騒ぎの後も普通に受付嬢を続けるアリナ。まもなく、年に一度の祭りの時期。1年目と2年目は残業で参加できず、3年目の今年こそ祭りを堪能したいとガイドブックに書き込みを入れまくるアリナだったが…。
その願いも虚しく祭も1週間前に迫った日に、朝から怒涛の如く押し寄せる冒険者。しかも、その原因がさっぱり掴めないので対策も打ちようがないという状況。そんな中、あるデマ話が発端ではないかとのことで、そのデマを拡げる謎のパーティが出るという場所に変装して向かう「白銀の剣」の面々とアリナだったが…。

2巻目も見所と残業てんこ盛り

暗躍する黒幕

前巻では偶然で魔神復活の流れに至ったかのように見えましたが、今回は裏に黒幕がいることがわかっています。また、ギルドの上の存在として「四聖」という存在も登場します。まあ、そう言いつつも出てきたのは3人ですけど。
さらに言えば、明らかに黒幕はあの人と思わせる筋書きですが、それがあたりなのか、はたまたミスリードを誘っているのか。まあ、ここまで風呂敷を広げたからには、是非とも続きをお願いしたいところです。ギルドマスターも「次もよろしく」と言ってましたからね。

相変わらず残業漬けのアリナ

前回、ギルドマスターから「受付嬢の増員」をもぎ取った我らがアリナさんですが、残念ながらまだ改善はされていません。そんなわけで、まだまだ残業は多いようですが、あまりの仕事量にブチ切れてソロ討伐するところまでには至っていないようです。それが良いことなのか悪いことなのかは分かりませんが。

残業について、後輩のライラとのやりとりの中で身もふたもない言い方をすれば「手を抜いたらどうか」という提案をされるのですが、我らがアリナさんは一蹴します。
正直、アリナさんの気持ちは痛いほど分かります。仕事は嫌いじゃないが、残業で自分の時間を削ってまでしたくない。でも、誰かがやらないと終わらない。他の誰かに振ったところでたまるだけ。それなら自分でやった方が良い、という負のスパイラル。メンタルやられる一直線。日本の会社はこういう名も無い死屍累々の骸の上に成り立っています。まあ、異世界の話ですけど。

架空の世界の架空のキャラクタの話ですが、現実にそういう現場を目の当たりにしていると、笑い飛ばしてもおられず少々複雑な気持ちになります。本作の記述が尾鰭腹鰭ついたオーバーな話だと思ってる方も多いかもしれませんが、現実で腐るほどありますからね。だからって、もちろん、巨大なハンマーを振り回して物理的に原因を粉砕したりできないのが現実です。

スキルというもの

今巻は「白銀の剣」のヒーラー、ルルリの過去話にフォーカスし、ルルリの成長も描いています。それと同時に、この世界の「スキル」というものについてもフォーカスしているかと思います。
作中、黒幕にいいように使われた悪役が以下の台詞を吐いています。彼はもちろん黒幕にいいように使われたのですが、それを自覚してなお、自分の行動を止められなかったのかと思います。

そもそもどうしてスキルなんてものがこの世にあるんでしょうね?
自分で選べず、魔法のように習得も修練もできない。一方的に与えられる運任せの力。
”当たり”なら人生は華々しく、”はずれ”ならゴミ溜めを這いずるしかない。

ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでバスをソロ討伐しようと思います2より

これはファンタジーの話ですが、現実でも同じです。もちろん、個人の努力次第で伸ばせる部分もありますが、生まれつきとか性格とか先天性後天性の事情で思うように生きられない人もたくさんいるし、むしろ思うように生きられる人の方が少ないのではないかと感じます。

そういう点で彼の気持ちもわからないでもないですが、だからといってこんな世界滅んでしまえというのは行き過ぎです。まあ、思うことは度々ありますが、流石に実行するつもりもないし、現実ではなかなか実行する機会もありませんけど。

もっとも、ジェイドはそんなスキルをはんば力ずくで昇華させてしまうのですが。物語としては良い話ではありますが、何か日本のブラック企業のやり方そのもので、手放しには賞賛できない自分を感じてしまいます。

スキルについてもまだまだわからないことが多いです。そもそもアリナのスキルは偶然なのか必然なのか。そして、通常の銀色と金色の違いは何なのか。

心に残った一言

今巻で一番心に響いたのが、アリナの後輩ライラがアリナに向けた以下の言葉でしょうか。いや、入社まもないのにそれを悟るとはライラ、恐ろしい子…。

そういうのが一番職場にとって都合がいいんです

ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでバスをソロ討伐しようと思います2より

前巻の感想

公式サイト