ラノベ感想:りゅうおうのおしごと!17
16巻からの続き。
毎度思うけど、切り方が絶妙で次が気になるというより、切れ目が悪いなと感じるのはなんでだろ。多分、前巻ラストではこれで話が一区切りで終わったと思ったら、次巻冒頭でいきなり前巻ラストの続きから始まるのが個人的に入ってこないのかと思う。
最初は2回くらいに分けて読もうかと思ったものの、途中で読み切りたくなったために一気に読み切ってしまうくらいには面白かったです。
そんなこんなで17巻を読んだので、感想をつらつらと。あまりまとまってません。
あらすじ
釈迦堂里奈女流名跡を破りタイトルを獲得した就位式。そこであいは決意を込めて奨励会での3段リーグを経ずに最短でプロ棋士になることを告げる。その発言に周囲も混乱、あいの元から遠ざかってしまう。それでも目標に向け公式戦でプロ棋士相手に盤外戦術まで使って勝ち進むあい。そこに現れた生石は研究対局後にある一言を残す。キーとなるのは八一に敗れ竜王から陥落した前竜王。九頭竜一門に敵意を持つ碓氷前竜王と対戦する。
一方、天衣に「100年後の将棋」を見せられた八一は将棋に絶望していた。その未来を見極めるため、外界との交流を一切断ち、スーパーコンピューターとのVR対局に挑む八一。最早何のために将棋を指すのかも疑問を持つ様なわからなくなる様な絶望の中、VRでつくられた銀子だけが将棋を指す理由だった。
そんな状態で順位戦に向かう八一は天衣による「褒美」としてはんば強制的にぎんこと再会。しかし、銀子の母からある「運命」を語られる。同じ東京将棋会館の中で行われる八一とあいのそれぞれの対戦。それぞれの「運命」を賭けた対局の行方は…。
俺たちの戦いはここから、の17巻
まあ、今までも出てきていた話題ではありますが、急にそこに注目されてきた感じがしてます。
コンピューター・AIと将棋
藤井五冠の活躍など「りゅうおうのおしごと!」より現実が先を行ってると言われる将棋界。さすがにスパコンを使った研究は現実的でないとは思いますが、ディープラーニングを使った研究は進んでるのでしょうね。
前巻で将棋クラウドの提供なんて話もあり、将棋界だけでなくIT関連も結構研究されている様。現実にはニッチすぎては採算とれないとは思いますが。
作中でも触れてる様に今や「呪文」を唱えればAIがそれっぽいイラストを描いてくれます。最近はChatGPTというAIチャットが話題。質問するとそれっぽい回答を自然な文章で返してくれる上、どんな分野で卒なくこなすというのが驚きを持って受け入れられています。過去に何度かあったAIブームのたびに「AIに仕事を奪われる」といった話題が出てきますが、またそういう話題が盛り上がってます。
著者紹介に「棋士という職業はAIに仕事を奪われる最初の職業になると言われたが、AIを活用する最初の職業になった」とありますが、これはさすがに異論があります。AIの歴史はそんなに浅くないので。言いたいことはわかりますが、これはさすがに過言。と言うか、知らないだけでどこかにソースがあるんですかね?
失礼ながら一般的には将棋のプロがいること自体が知られてなかったかと。例えば、今年11月の10年後になくなる職業11選には棋士は当然入ってません。棋士が存続できるかどうかは棋士と一部のファンしか興味ないですから。一部でそういう話題が出ても、現実的には無くならないと思います。なくなるとすればAIがどうのと言うより、市場規模と言うか指し手のコミュニティが維持できなくなった時かと。
それはさておき、主にディープラーニングなどの機械学習によってAIとブームが再来。またぞろこの仕事が奪われるとかいう話が出てます。が、正直、なくなりはしません。例えば、プログラマも何度もなくなると言われ続け、いまだに残ってます。それは棋士よりよほど昔から言われてるかと。
もっともレベルの低い人が仕事をなくすことはありえます。ただ、それは別にAI登場と関わりありません。新しい技術に対応できない人や顧客の意図を汲めない人はどのみち淘汰されます。AIもツールである以上、それを使いこなせる人は生き残り、できない人は淘汰されるのは棋士もプログラマも同じ。その人が職を失うのはAIのせいではなくて単なる力不足です。
スーパーJS
最近異常性を際立たせているのが天衣。まだ小学生ですが、夜叉神グループのある程度を既に率いているよう。その中で女流棋士としてタイトルを取りつつ、巻末で明かされる大きな野望に向かって大人を巻き込んだ策略を張り巡らせているのですから。
本作で一番気になるのが彼女です。抱えた闇の大きさに心配になるし、きっと彼女の想いは叶えられないというのが見えているので、すごくかわいそうに感じてしまいます。彼女もその自覚がありながら、溢れる想いを抑えきれないよう。八一と銀子やあいとの絆の強さに打ちひしがれつつ、強気に攻め続ける天衣。月並みですが、とにかく彼女には幸せになってほしいです。でも、幸せにはなれないのですよね。クズ竜王爆発しろ。
プロ棋士という制度
今までも棋士や奨励会制度、プロ、そして女流棋士といった将棋界を取り巻く話題を取り上げてきた「りゅうおうのおしごと!」ですが、今回クローズアップされたのがプロ棋士になる方法。現実の棋界はすでに作中のような仕組みから変わっているそうです。
将棋に関わる人間が多かった頃は、誰も彼もプロにするわけにもいかず、色々と制限を設けていたのかもしれません。ただ、時代が変わり将棋人口も減った中で制度も古くなってしまったのでしょう。その変革を求めてあいが動き出すわけです。
兄はバカだから東大に行った
作中で出てきたこの言葉。実は今までちょくちょく登場していた八一の兄は東大卒とのこと。しかも、将棋クラブに所属しており、その縁で天衣の父母に将棋のコンピューター化に関するアドバイスもしていたよう(作中では明記されていませんが)。
なお、このセリフ自体は実際に伝説として残っているセリフ。ただ、実際には本人はそのようなことは言ってなかったそう。別の棋士がその人に関するエピソードとして冗談で語った内容とのこと。なお、兄3人が全員東大に行っているとのこと。優秀な家系なのか、経済力があると行けるのか。
しかし八一の兄はまともに就職していなかったもののかなり優秀なよう。さらに雛鶴家と(おそらく)夜叉神家にも関わっているという。世界は狭いと言うかなんと言うか。
この話は東大に入学できる学生の数より、プロ棋士の方が少ないからという話らしいです。ただ、それとバカだとかどうかとかは関係ないですよね。強いから生き残るのではなく、生き残るから強いのだという言葉もありますが。そういや、バカは東大に行け、というマンガもありました。
再び・棋士という職業は無くなるのか
「りゅうおうのおしごと!」の作中でどうなるのかわかりませんが、なくならないとは思います。現状、AIの欠点として自分が知らないということを判断できないのだとか。上で書いたChatGPTでも知らないことでも既存の学習結果から何らかを出力してしまうそう。つまり、結果として嘘を回答します。
もちろん、AIが自発的に嘘回答をしてやろうとか思っているわけではありません。学習している内容をもとに、なんとか回答をひねくり出しているだけです。ただ、自分の学習内容に問いの答えがあるのかないのか、自分がそのことを知っているのかいないのかをAI自身は判断できない、だから「知らない」という回答ができないのだとか。その結果、現状では結果として嘘をつくことがあるし、実際にChatGPTがとんでも回答をしている事例の報告はたくさんあります。
では、際限なく学習を続ければこれは解消されるのでしょうか?自分はそうは思いません。知識が無限である以上、AIにしろ人間にしろ、永遠に学習は終わりません。敵を知り己を知れば百戦危うからずと言いますが、己を知ることができないAIが出す結果だけを信用するのは危険なわけです。
同様に、今回出てきた盤外戦術みたいなことや駆け引きはまだまだAIには難しいでしょう。実際、対コンピュータ将棋に対しての対策なんてものも出てきているそうです。それに、人間同士が同じルールで制限がある中で対戦するから将棋はもちろん、スポーツなども含めて面白いわけです。ルール無用、制限なしの戦いなんてあまり面白いとは思えません。
話の流れから、あいがなんらかの回答を出してくれそうな感じです。あとがきによれば次巻はあいと天衣の戦いだそう。なんらかの回答が出るのか、次巻以降になるのかわかりませんが、期待して待っています。
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