ラノベ感想:蜘蛛ですが、なにか?13
エルフの里進行前夜。人魔大戦の収拾とエルフの里侵攻とシステムへのハッキングで多忙を極める白。王国政変の裏で暗躍した白は侵攻前にシステムへの足掛かりを築くためについに自身でシステムへの直接介入に動き、防衛機構と対峙する…。
あらすじ
人魔大戦は乗り切ったものの、思惑が外れてしまった「白」。勇者対策とポティマスの影響排除のためにアナレイト王国の政変を画策。さらにエルフの里侵攻のために教皇の協力を取り付け、魔族軍は帝国を超えてエルフの里へ侵攻することに。
その裏で「システム」を破壊することで世界の救済をもくろむ「白」はシステムへの介入を決断。勇者抹殺時にシステムから勇者という仕組みそのものを取り除こうとした際に妨害してきた防衛機構と直接対決するためシステムへ赴こうとするが、魔王に今日は休めと止められる…。
暗躍と死闘の第13巻
王国政変の舞台裏
すでにシュン側の視点で語られていたアナレイト王国の政変ですが、今度はそれを画策した「白」たちの視点でざっと描かれます。政変だけでなく、アナレイト王国の立ち位置とか周囲の国家との関係、そしてなぜ王国に「学園」があったのかというあたりも明かされます。
ついでに第10軍編成の裏話も語られますが。
もっとも、それよりも驚愕したのがシュン側のある人物の正体ですが。これ何か伏線ありましたっけ?読み落としていたのかもしれませんけど、それあり?と思ってしまいましたよ。
途中、「白」がソフィアやフェルミナの暴走に振り回され、挙句にベイビーたち(迷宮の残滓)まで厨二病を発症して意味深なことをシュンたちに伝えたりと、なかなか大変な目に遭ってますが、まあ、エルロー大迷宮時代のマザーと蜘蛛子さんと思うと因果応報と言うか、なんと言うか。
白と魔王
そして個人的な一推しが白とアリエルの交流の場面。具体的には「7 これまでをまとめて今後の予定を立てるお仕事」のラストの方から「間章 孫の過労を労るおばあちゃん」まで。
魔王も白も自分たちが見る人から見れば「悪」であると認識しているし、それでも世界を救うため(正確には「白」は世界を救いたい魔王の願いを叶えるため)にあえてそれをなそうとしている。それは教皇も同じ。
でも、教皇と「白」たちの違いは彼女らはあくまで自分のためにやっている。そして、それを自覚してか無意識か、巻き込んでしまうことになる身内に甘い。おそらく、教皇なら身内だろうと自分だろうが、人族のためならいくらでも切り捨てる。それが良い悪いではなく、そういう考え方の違い。
その上で、やっぱり「白」やアリエルに惹かれてしまいます。
Dと白織
Dもなんだかんだと「白織」に甘いです。最初はちょっとした思いつきだったのかもしれませんが、ギュリエが最初に「私」の前に現れたあたりからちょっとずつ介入が始まり、「その方が面白い」という理由で支援を続けています。連れてかれてしまったので「いました」でしょうか。でもまあ、きっと隙を見て監視と干渉を続けていそうです。
Dと「私」はそもそも何の関係もなく、「私」のアリバイづくりのための数合わせだったわけですが、本当に「若葉姫色」としての記憶を「私」に持たせる必要があったのかは少々疑問に感じています。
結果論として、「若葉姫色」としての記憶やその考え方の影響を受けて、「私」がやがて「白織」になるわけですが、そのどこまでが本来の蜘蛛で、「若葉姫色」の記憶にどこまで影響しているのかわかりません。わからないので、個人の勝手な意見ですが、DにとってはRPGのキャラメイクみたいなノリがあったのかな、という気もします。
最近のRPGにありがちな最初からキャラ設定があるゲームの登場人物ではなく、古いRPGのキャラの設定や行動指針の全てがプレイヤーに委ねられていた頃のゲームの登場人物のキャラメイクです。自分では直接世界に干渉してはならないDが、自分の代わりに世界を動かす駒としてのキャラクターが「私」であり、自分らしさを付与するために「若葉姫色」としての記憶を与えたのでは、と。
システムとサリエル
今回のメインバトルシーンはシステム内部での防衛機構との対決になります。ただ、そこかしこで「天の加護」やサリエルについての疑惑の話が上がってきています。例えば以下の部分。
それは過去の人間たちの身勝手さが透けて見えたり、あるいはあれだけ魔王に慕われ、救われることを望まれながら、本人はそれを望んでいない女神に対するものなのかもしれない。
「8 システム に 喧嘩 を 売る お 仕事」より
システムに縛られているサリエルについて、自我があるのかどうかは今までに明言はなかった様に思います。読み落としていたらすみませんが、その前提で「白」はなぜか明確にサリエルがアリエルに救われることを望んでいないと言うことを確信しています。
そして、その考察はユリウス死亡後にすぐにシュンが勇者になったことに向けられます。
勇者や魔王を死ねば他の誰かに称号が引き継がれ、時代が生まれるが、そのタイミングというのは勇者や魔王が死んだ直後、ではない。
「8 システム に 喧嘩 を 売る お 仕事」より
<中略>
勇者ユリウスが死んだのと、山田くんが勇者になったのはほぼ同時だ。
今まであったはずのタイムラグがまったくなかった。
これは、誰かの意思によって山田くんを次代の勇者にすることが決められていたのではないかと、そう思えてしまう。
それが誰なのか。
候補は二人。
Dか、この女神か…。
ここでも女神サリエルについて、現状で自我があることを前提としています。
Dの介入というのは「白織」が思っているようにありえなくはありません。転生者の転生先の処遇や与えられたスキルとか見ると、結構「それノリで決めたよね?」みたいなの多いですし。ただ、蜘蛛子以外の転生者について、転生後に何らかの介入をした形跡って今まであったかな?とも思います。まあ、読み落としていたり、あるいは単に描かれていなかったということもあるかもしれません。
ただ、この部分の記述がどうにもフラグっぽいし、そもそも「白織」としてもはんばサリエルが原因で、天の加護として色々妨害行動を行なっていることを確信した上で、アリエルの心情を考えて無理にDの仕業と納得しようとしている感がある様な気がします。
まあ、的外れかもしれませんが…。
いよいよエルフの里へ
そして次の14巻は、いよいよエルフの里への侵攻です。もちろん、シュンパートで一度描かれているわけですが、その後の7巻以降で知った諸々の背景もあり、アリエルや教皇ほどではないにしても、読者としても感慨深いところがあります。アニメ最終話でぶん投げられたところに再び辿り着きます。それと共に、アニメ終了以来、一気にここまで読んできた「蜘蛛ですが、なにか?」の既刊がついに一旦終わってしまいます。14巻が出版されたのが2021年1月。期間の刊行ペースを見ると、2018年7月の9巻以降、1月と7月に刊行されていますが、2021年7月は刊行されませんでした。次の15巻がいつ出るのかよくわからないので、少し寂しいところもあるのですが、まずは14巻ですね。
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