ラノベ感想:蜘蛛ですが、なにか? 15
ポティマスを倒し、エルフを殲滅した魔王と白は転生者と対面。戦後処理を進めようとするが、そこに邪神Dが人族、魔族を含めた全人類にワールドクエストと称して、伏せられていたシステムの秘密を含む”禁忌”を暴露。白と黒を闘わせ、その両者を応援という名目で全人類に二者択一を迫る。
白、黒、魔王、教皇はそれぞれの想いと覚悟で全人類を巻き込む戦いに臨む…。
あらすじ
無事にポティマスを倒した魔王と白だが、魔王はもはや戦うことはできない状況に陥る。そして、白はエルフの里に囚われていた転生者と勇者一行と対面する。その戦後処理も終わらぬ中、全人類に突然世界の言葉が告げる。「ワールドクエスト発動。世界の崩壊を防ぐため人類を生贄に捧げようと画策する邪神の計画を阻止、もしくは協力せよ」。
それにより、密かにシステムを破壊しようとした魔王と白の目論見が黒と教皇に知られることになる。それは対ポティマスで一致していた仮初の協定は破談。黒は白に対して自分のフィールドで闘いに突入。
先手を取られた白は何とか黒の猛攻を凌ぐが、邪神Dはさらに全人類に選択を迫る。白い神と黒い神の闘いに参加はできないが、応援することはできる。どちらかを選択せよ、と。
今、システムを巡る最後の闘いが始まる…。
世界を巻き込む激動の15巻、いよいよラストへ
物語もいよいよラストバトルへ。2022年1月刊行予定の16巻でラストになる…のか?長かった蜘蛛生もいよいよクライマックスへ。
白黒激突
最終的には黒との衝突を予想して備えを進めていた白ですが、邪神Dにより準備が整わないうちに、しかも、先手を打った黒のフィールドへの闘いに持ち込まれるという圧倒的に不利な状況。いや、散々決断すべき時に決断しなかった黒のくせに、こんな時だけ即断即決かい!と白派としては愚痴りたくなります。
まあ、諸事情もあったし、彼としては女神の意思こそが全てなのでしょうけど。そういう意味では諸悪の根源が女神だったりします。仮に黒がかってシステムが存続したとして、そこに黒がサリエルの代わりにシステムに組み込まれて果たして世界がどこまで保つのか。そして、管理者不在、かつ、真言教も崩壊するのが確実なこの世界が本当に存続できるのか。結局は、問題の先送りに過ぎません。
とは言え全人類の半分が滅びると言われて大人しくそれを受け入れるくらいなら、女神がシステムに取り込まれる事態も起きなかったわけです。それを隠して裏でシステムの延命を続けてきた教皇も結果論ですが罪なことをしたものです。
魔王と教皇の決断
白が黒のフィールドに連れ去られて取り残された魔王と仲間たち。最早、魔王と言っても魔族の支持も得られないであろう立場に。それでも白の勝利を信じて、教皇の動きを阻止すべく動き出します。そこに邪神Dにより”応援演説”をさせられるわけですが、ここでバッサリと切り捨てます。いや、魔王は本当に漢です。
だって私は人類に期待してないからさ。
幕間「両者の主張」より
そりゃそうでしょ。こんな状況になるまでのうのうと暮らしてたような連中に、何を期待しろっての?
(中略)
人類はさ、過去に自分らが救われるためにサリエル様を生贄にすることを選択した。だったらもう今回だってどんな選択をするのかって、目に見えてんじゃん。
(中略)
人類よ、女神のために、死んでくれ。
それに対して、一種の憧憬を込めて教皇ダスティンが返した言葉が「神々よ、人類のために、死んでくれ」です。自分の行いを自分自身が大嫌いであると認めつつ、それでも人類の存続を願う彼もまた漢です。正直、理解できないところもありますけど、それでも全人類の業を背負っての発言ですから。ある意味、大統領として、教皇として、人類のために貧乏くじを引き続けたのが彼でした。
それでも、これで黒と教皇が勝ち、システムが存続したとして、人類に未来はないのです。根本的な解決ではない上に、その結果として管理者である黒がシステムに取り込まれればもはや誰も管理するものがいないのですから。
結局、女神の自己犠牲はなんだったのか、教皇や管理者である黒の想いはなんだったのかと思うと、やりきれなくなります。それがわかって手を貸した邪神Dの真意がどこにあるのか。白と黒の闘いも気になりますが、それよりもその戦後と邪神Dの思惑が気になるところです。
あとは、勇者山田くんことシュレイン王子がどうなるのか。そして、冒頭からいきなりかましてくれたロナント様がどう動くのか。白が彼を飛ばしたのが、単に律儀にスーとの約束を守ったのか、自分や魔王に対する障害になりうる「勇者」を遠ざけたのか、その両方なのかわかりません。が、彼もまたこのまま退場するのをよしとはしないでしょう。人類というか人族を守ると決めた彼がどう動くのかも気になるところです。
そしてクライマックス
後書きによれば16巻が最終巻になるようです。もっとも、編集者との会話の中で「16巻が最終巻になると思う」という記述があるだけで、他の部分では明確に最終巻とは書いてないのが少し気になりますが、少なくとも今の話は16巻で終わるかと思います。
アニメのあまりの投げっぷりに放送終了後に読み始めた原作も終わりが見えてきました。正直、アニメでやっていた部分よりも、その先の部分の方が自分には数倍面白く、次々と一気読みを重ねてここまできてしまいました。その物語がいよいよ終わると思うと寂しいですが、結末を楽しみにしています。
公式サイト
蛇足
同じような時期にアニメ化されたものを見て原作に手を出したのが、この「蜘蛛ですが、なにか?」の他に「転生したらスライムだった件(転スラ)」と「本好きの下剋上(本好き)」です。
この3つの物語、巻数はそれぞれ異なりますが、転スラは11/30に最新19巻が出てラスト3冊の予定である旨あとがきに書かれています。そして、本作と奇しくも同じ日に刊行された本好き第五部7巻(通算28巻)ですが、こちらも後書きで4月刊行の第五部8巻(通算29巻)が最後っぽい感じです(オリジナルのWeb小説は完結済。Web版とは細かい違いがあるらしいですが、少なくともWeb版を元にした話は第五部で終わりなので、おそらくと1冊かせいぜい2冊で終わりそうなのは確かです)。
そんなわけで、同時期に同じような理由で読み始めた3作品がいずれも完結を同じような時期に迎えるというのも何の因果か。まあ、同じと言っても転スラはまだ3冊あるので、刊行ペースを考えるともうちょっと先になるでしょうか。何にしても寂しいものです。
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