ラノベ感想:陰の実力者になりたくて! 02
元々気になっていたものの他に読んでいるシリーズもあったのでAmazonの買い物リストにためてました。それがアニメ化されたのでアニメを見つつ、コミカライズにも手を出し、ついに原作まで。その原作の2巻目の前半でアニメでは10話から14話あたりまで。ここまでだいたい4話くらいで1エピソードのようですが、聖地編は5話かけてます。後半はブシン祭編で15話から19ないし20話くらいまででしょうか。
あらすじ
アルファから詳細を告げられず聖都・リンドブルムへと訪れたシド・カゲノー。ここで行われるイベント、「女神の試練」にアルファが出るのだろうと呑気に見学していたが、勘違い王女ローズ・オリアナによってシドもエントリーされていた。「女神の試練」では自分の実力よりやや上の古代の戦士の記憶が呼び出され、どちらかが倒れるまで闘うことになる。陰の実力者であることがバレては困るシドは、窮余の策としてシャドウとして乱入し、すべて有耶無耶にする作戦にでる。そこに呼び出されたのは紫の瞳を持つ「災厄の魔女」、アウロラ。一般には名前すら知られていない教団の秘密に迫る存在と、シャドウの熾烈な闘いが始まる…。
後半はシドが「なんだあの弱っちい奴は…からの、実は圧倒的な実力を持っていた!」ムーブをやりたいがためだけに、行方不明扱いの「ジミナ・セーネン」としてブシン祭の剣術大会に出場。しかし、そこにオリアナ王国を操る「教団」の影が。ローズ・オリアナの運命は、そして、剣術大会の決着は?
フラグを作っては叩き折るシド・カゲノー
本人は単に盗賊相手に武者修行(という名の一方的な虐殺行為)をしているだけですが、その過程で結果的にあちこちで少女たちを助けてはフラグを立てるシド。しかし、彼自身は1巻でルスラン・バーネットに語っているように、「陰の実力者になりたい」という目的以外はすべて「どうでもいいもの」扱い。その中でも好き嫌いはあるようですが、どちらにしろ彼自身はまったく女性に(と言うか他人に)興味がないよう。現世、異世界含めた全男性の敵ですね笑。
へっぽこヒロイン3人組
ゲームやアニメ、マンガでよくあるのが主人公を含めたへっぽこ3人組。本作で言えば、シドが厳選した天然モブのヒョロとジャガにシドを加えた3人が悪友3人組でしょう。一方、今巻で結成されたシドに想いを寄せるへっぽこヒロイン3人組が、ナツメ(ベータ)、アレクシア、ローズの3人。
その中でもとくにナツメとアレクシアは仲が良いのか悪いのか。アニメ、コミカライズでは読者・視聴者に判断を委ねている部分がありますが、原作ではアレクシアの胸中で割とはっきり語られていました。
これは嫉妬ではない。あえて言うなら同族嫌悪だ。
一章 『女神の試練』で楽しもう! より
アレクシアも民衆の前では完璧に振る舞う。己の内面を押し殺し完璧な王女を演じ生きてきた。上に立つものは大なり小なりその役を演じているが、己を殺し完璧を演じる人は少ない。そして己を殺している人間ほど、その裏側はどす黒いと相場は決まっているのだ。
まあ、自分と似たような雰囲気を持っているから、自分と同様にきっと腹の中はどす黒いに違いない!という独断と偏見ですが、ことベータに関しては当たらずとも遠からず。同様なことはベータも考えているわけですが、アレクシアは自覚があるのに対して、ベータは自分を棚上げしている感じなのが面白いところです。
この辺の関係性はベータとイプシロンも近いところがあるような。イプシロンから一方的に敵意を振り向けられて、やたらと張り合う二人ですが、同じ一章のベータの心理で「細かく伝えなくてもイプシロンなら最善の行動に出る」と信頼の強さを窺わせています。ライバルであり、戦友でもあるからこその絆でしょう。
へっぽこヒロイン3人組も、今巻では前半は(アレクシアのせいで)一緒に聖地に飛び込むこととなります。また、後半ではローズが関わる事件のせいで袂を分つことになりますが、アレクシアはローズやナツメを仲間だと認識しています。多分、その中にはシドも入るのでしょう。性格が捻くれているので素直に仲間とか言わなそうな彼女がはっきりとローズやナツメに対して仲間と口にしているので、剣だけじゃなくて彼女も成長しているのでしょう。
そちらは絆を築きつつあるようですが、一方でアニメ14話のサウナらしきシーンでは、誘拐事件後に和解した姉アイリスとの意見の衝突が目立つ感。ちょっと心配なところではあります。アイリスは真面目が故になんでも抱え込んでしまうタイプに見えるのに対し、アレクシアは姉と比べられてコンプレックスを感じつつも、持ち前の捻くれと腹ぐろでドライに達観している部分もあり、現実主義的に見えます。アイリスがそういう妹の自分と違う良い部分を汲み取って、うまい具合に方向修正してくれるとよいのですが。
ここまでで最高の対アウロラ戦
コミカライズ10巻(原作だと3巻まで?)を含めて個人的に一番好きなのが、災厄の魔女、アウロラとシャドウの対決シーン。以下の部分はたまりません。
戦いとは、対話であると僕は思っている。
一章 『女神の試練』で楽しもう! より
剣先の揺れ、視線の向き、足の位置、些細なことすべてに意味があり、その意味を読み取り適切な対処をすることが戦いなのだ。
些細なアクションから意味を読み取る力、そしてそれに対してよりよい回答を用意する力こそが、戦いにおける強さであると言っても過言ではない。
だから、戦いとは対話なのだ。
しがないシステム屋さんなので戦闘経験なんてないし、武道や格闘技、各種の対戦形式のスポーツも学校の授業でやったくらい。ですので、戦いが対話かどうかは正直わかりません。
ただ、仕事の経験からもそういう「対話」が必要なのは理解しているつもりです。ユーザの出してくる要件や仕様。そこから何を汲み取り、どう実現するか。それがシステム屋さんとしての「対話」です。相手から業務の内容、詳細をくどくならない程度に聞きだし、相手が言ったことをそのままではなくて、どうしたら使い勝手が良いかを考える。それ意味がないんじゃない?と思うようなものでも、実はそうなった理由があるかもしれない(ないことも多い)。
そんな感じで仕事をしてきたので、この部分は「なるほどなぁ」「そうだよねぇ」と思ってしまいます。
そういう対話のない仕事は寂しいものです。シドも事実上の陰の実力者になってしまってからは、いつも魔力で圧倒してしまうのでアウロラ戦では「久しく対話ができなかった」と零しています。後半のブシン祭では「武神」ベアトリクスと対戦しますが、それも対話にならずに圧倒。3巻でも(コミカライズを見る限り)敵と対峙するもののライバル不在の状況で対話にならず。普通はあそこまで極めようと思わないが故に、アウロラ級の規格外じゃないとなかなか対話もままならないよう。
狂人の真理
本作の主人公、シド・カゲノーはとにかくぶっ飛んでいます。なにしろ、敵である教団幹部から毎度毎度「狂っている」と言われるくらいですから。当然、教団幹部たちは一般的には悪人であって、真っ当な神経を持ち合わせてません。が、その彼らをしてシドはぶっ飛んでいます。
なにしろ、致命傷じゃなければ遅延ゼロで反撃できるから素敵だとか豪語しちゃうくらい。肉を切らせて骨を断つどころか、心臓の場所を突かせて頸動脈を食いちぎるのですから(ただし、本当に心臓を突かれるとさすがにやばいので、心臓の位置を魔力で引っ張ってずらすという、アウロラ曰くびっくり人間)。
もっとも冷静なツッコミを入れると、いくら致命傷じゃなくても出血が激しければ失血死すると思うので、「(心臓に)当たらなければどうという事はない」とは言えないと思うのですが。魔力を使って肉体改造しているらしいので、なんでもありなのかもしれません。
そんなシドは自分にとっての一番の目標である「陰の実力者」以外の事はすべて切り捨てています。そんなわけで、物事に対する見方がかなりドライ。宗教に対しても「英雄なんてごく一部の例外を持ち出して、一般人を惑わそうとするあたり宗教っぽい」と断じています。ま、この事自体は別に宗教の専売特許でもないですけど。いますよね、極論を持ち出してきて反論を封じて「論破した」とかいう人。「詭弁の特徴のガイドライン」というネタは有名ですけど。
まったく共感できないキャラではありますが、その一点だけにすべてを賭けた上に、ある意味実現してしまっているのですから感心します。ただ、本人はあくまでそういう設定を楽しんでいるだけなので、達成感を感じる事はあっても、夢を実現することはできないのかも。それだけの想いをかけて何かに打ち込めるというのは羨ましいかもしれません(やってることは…関わり合いたくないですが)。
今後は
Amazon KIndleの読書キャンペーンで5冊まとめ買いするとポイントアップに乗せられて3巻まで購入済み。ですので、続けてこの後3巻を読む予定。このキャンペーンは週単位で2023年1月29日まで繰り返し行われているため、今週か来週分でおそらく残りの原作2巻も買って読むかと思います。
次は赤い月編と経済戦争編。コミカライズされている部分はここまで。ここまで次々と読み進めてしまったのは「転生したらスライムだった件」「蜘蛛ですが、なにか?」「本好きの下剋上」以来。とくに「蜘蛛ですが〜」は完結してしまいましたし、「本好きの〜」も結末が近い(と言っても刊行ペースから残り2巻で完結するまで半年以上先)状態。ただ、本作も打ち切り説が出るくらい4巻から5巻まで(Web掲載も含めて)長かったようですし、その5巻も出たばかり。原作6巻が出るのは当分先になりそうなので、それまではコミカライズが追いつかないことを祈る日々でしょうか。
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