ラノベ感想:天才王子の赤字国家再生術5 ~そうだ、売国しよう~

読書,ライトノベル,国家経営,天才王子,異世界,鳥羽徹

アニメからコミカライズを経て原作を読んだものの、その後は他作品を読んでいてご無沙汰でした。今巻はアニメの10〜12話に相当。アニメはこの5巻まで。ところでアニメ2期は…ないかなぁ。

あらすじ

ミールタースから帰国したウェイン。マーデン領を経由して西側諸国に帝国の商品をナトラ産として売り捌くことで多大な利益を上げる。しかし、それによってマーデン領の力がナトラ帝国内で相対的に上昇。ウェインとゼノヴィアにとって新たな悩みの種に。そんな中、ソルジェスト王国のグリュエール王から式典への招待が届く。結ぶならばソルジェスと王国と考えていたウェインは渡りに船とばかりに飛びつくが…。

本巻の影のヒロインはゼノヴィア

今回の話は後書きにも「ボス戦」とあったように、ナトラ王国の王太子であるウェインと、ソルジェスト王国の王であるグリュエール王との直接対決。まあ、戦場での直接対決ではないですが、謀略戦を繰り広げます。でも、その裏でゼノヴィアの成長も描かれていたかな、と。

A面:ウェインに迫るグリュエールの魔の手

ネタバレは書かない方針なのであまり細かくは書きませんが、前半はウェインは後手に。ただ、プロローグ部分やマーデン滞在中にもそこかしこに布石が。これを書いている時点でちょうどTVドラマ「トリリオンゲーム」の最終回を見ていたので、少しあちらの主役の1人ハルとウェインに重なる部分もあるな、と感じます。

先を見て手を打っておく抜け目なさがありつつ、それだけではなくてその場の即興も含めて場を支配する力。ひつようならはったりをかまして乗り切る。これが英雄としての資質なのかと。
布石を打っておくだけではダメで、それらをその場その場で柔軟に組み合わせて「役」を組み立てないと勝負(ギャンブル)には勝てない。その辺り、ゼノヴィアやジーヴァが彼を恐れる部分でしょうか。そもそも、彼がなぜ国民や王族の血について特異な考えを持つようになったのかはいつか明かされるのでしょうか。

B面:心折れるも復活するゼノヴィア

今回、心をへし折られまくったゼノヴィア。彼女もまた捲土重来を目指すことに。これまたネタに関わるので詳しくは書きませんが、今巻のヒロインかと思ってます。ま、心をへし折られまくった人物は他にもう一人居ますけど。さらにもう一人、心をへし折られていても不思議じゃない人物もいますが、彼女は一向に気にしてないようですし。

そのゼノヴィアに関する記述で驚いたのが以下の部分。詰め込みすぎで端折りすぎてるアニメはもちろん、コミカライズでもカットされているのですが、ゼノヴィアの芯を見るには重要なエピソードと感じます。それは幼い頃のゼノヴィアが可愛がっていた犬が蛇に噛まれて死んでしまったというもの。

ゼノヴィアは大層悲しみ、子犬を埋葬。その後、4日かけてその蛇を探し出して自ら剣で刺し殺したというもの。また、あくまでジーヴァの想像ですが、マーデンがカバリヌに攻め込まれた際にソルジェストもデルーニオも黙殺した件もあって「カバリヌもソルジェストもデルーニオもついでにレベティア教も、いつか絶対殺すリストに記載されている相手」と。うーん、ウェインがカバリヌ王を暗殺したことにドン引きと言ってたゼノヴィアですが、結構、こちらはこちらでヤバイような。もちろん、求めた助けを無視されたのだから思うところはあるでしょうが、それで「絶対殺すリストに記載」は、ニニムのことを言われてカバリヌ王にブチ切れたウェインのことをどうこう言えないような。

それはともかく、自身の(半分はどうしようもない事態とはいえ)失態でナトラを窮地に陥れてしまうことになったゼノヴィアの心が折れまくっているのに対し、ウェインはウェインで「この状況、泣いてる暇なんてどこにもない。心が折れているというなら、折れたままでも動いてもらうさ」と非情なことを内心で考えてます。まあ、実際世の中そんなものなのですが。

できるできないじゃなくて、やるしかないなんて場面はいくらでもあるわけで。それをなんとかしないと先はないのだから、色々できない理由を挙げても仕方がないわけです。まあ、引くことで傷を抑えることができる段階なら、それも手ではあるのですが。その意味では、ゼノヴィアもいわゆる帝王学をまったく学んでこなかった割には、強烈な手本がいるせいからか、生来の資質からなのか、なかなかうまく立ち回っていて先が楽しみです。まあ、帝国にはロウェルミナが居て、ナトラにはフラーニャも居て、ソルジェストにもじゃじゃ馬がいるので、なかなか険しい道ですけど。

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