ラノベ感想:現実主義勇者の王国再建記 I
現在(2022年1月)アニメ2期放送中ですが、Kindleストアで1巻が0円セールでしたので購入してしまいました。通称、「現国」です。
あらすじ
異世界に「勇者」としてエルフリーデン王国に召喚されてしまった相馬一也。事情を確認すると帝国からの圧力で金を出すか勇者を召喚して帝国に送ることになっていることを知った一也は王国のあらゆる資料を取り寄せ、王や宰相と共になんとか支援金の捻出に成功。
その結果、王から王国と娘を譲られることに。とにかく、問題山積みの王国経営のため、一也は一芸ある人材募集を国中に触れ回る。そして集まったのは一癖も二癖もある人物たちだった。
勇者だけど魔王を倒したり、冒険したりしないで、内政に外交に軍事にと国の運営を行う国家経営ファンタジーが、いざ開幕。
バトルしない勇者の建国記
アニメ1期を見ているので話はわかってますし、特にアニメでは描かれていないエピソードがあるわけでもなく、順調に読み進めました。そういう点ではアニメは随分と丁寧に作られているのですね。
そうだ内政しよう
勇者として召喚されましたが、別に体育会系でも武道を極めたわけでもない主人公、相馬一也。作中ではソーマと呼ばれることになります。これはついつい日本のノリでソーマ・カズヤと名乗ったことで、名がソーマ、名字がカズヤと誤解されたことによります。その後、親しい人間の間ではカズヤと呼ばせています。
本来、帝国からは魔王との戦争のための支援金を要求されており、それができないときは勇者を召喚して引き渡せという話だったのですが、帝国でどういう扱いを受けるかわからなかったソーマはなんとか支援金を捻出します。その手腕を見た王様が退位して娘を婚約させた上でソーマを国王にするという荒技を展開するのが物語の始まりです。王は本来はそんな判断ができる人物ではないとされていますが、作中やアニメの流れでは何やら思惑があるようです。
そんなわけで戴冠していない現在は「国王(代理)」のソーマが始めたのはまずは人材確保。まあ、異世界ものではありがちなパターンではあります。仲間がいないと何をするのも難しいですから。特に、ソーマ自体は召喚された時点で一応魔法が使えるようになっていますが、それは物に自分の意識を宿して操るというやや地味な能力。いわゆる並列思考で分割した意識を物に宿らせることができるようで、それで状況を見聞きしたりもできるあたり便利な能力ですが、他者を圧倒するような能力ではないのも確かです。
そんなわけで仲間を集めつつ、食糧問題を解決したり、新たな港湾都市の建設に着手したり、といったところが1巻の内容です。現時点では国内の状況の整理や周辺国との関係といった内容で、戦闘シーンもないという地味な物になっています。1巻のクライマックスといえば、領内のダークエルフ(別に邪悪な存在という意味のダークではない)の森で災害が起こり、そこに自ら救援に駆けつけるという物ですから。
「転生したらスライムだった件(転スラ)」のアニメで、会議ばかりしていてつまらないという不満の声が上がったそうですが、そういう内政とか外交とか国家運営の部分を楽しめない方には辛いかもしれません。まあ、アニメを見ていた方はご存知でしょうが、今後、領内の勢力との内戦や隣国との戦争もあります。が、あくまで本質は国家運営です。逆に言えば、「転スラ」でも内政、外交といった国の運営部分が好きな自分は期待したくなる作品です。アニメはたまたま知人が見ていると言われてみただけでしたが、原作もいつか読もうとは思っていました。ちょうどセールで良かったです。
家族を作ろう
冒頭のモノローグからして、家族を作り、大切に守れという話から始まります。ここは多分拡大解釈して家族のような仲間を含むのでしょう。そうやって集まったのが最初の人材募集で集まった面々であり、かられと共に国を再建していくことになります。
その仲間がソーマ自身を含めて7人になります。その中でも1巻で目立つのは前国王の娘でソーマの婚約者リーシア・エルフリーデン、ダークエルフで舞踏大会で優勝したことでソーマの護衛を務めるアイーシャ・ウドガルド(がっかりダークエルフ)、世界を食べ歩き食に詳しいポンチョ・”イシヅカ”・パナコッタでしょうか。そのほかの面々もそれぞれ個性があり、おそらく今後活躍することもあるのでしょう。例えば、アニメの1期の時点では動物と話せる、そして、それは魔物や魔族も含むというとんでもない爆弾を抱えつつ、癒し系ケモ耳妹キャラとしての役割しか果たしてないトモエ・イヌイとか。本作では魔物と魔族、そして噂される魔王という存在が何やらキーになっていそうなので、今後、重要な役目を果たすのかもしれません。
ちなみに、本来の国王は退位したので前国王ですが、ソーマ自身は戴冠していないので国王(代理)と名乗っています。はて、どうなったら戴冠できるのでしょう?読み飛ばしたかな。独立国であるので、他国(例えば帝国)の承認が必要とも思えませんし。
例えば、エルフリーデン王国には、それぞれ陸海空の3軍を統べる侯爵が3人いて、三公と呼ばれています。その承認が必要なんでしょうか。ただ、アニメ1期が終わった時点で三公の二人はその地位を追われているのですが。
現実主義というかなんというか
タイトルは「現実主義勇者」となっており、おそらく勇者として召喚されたソーマがRPGのような勇者ぽい活動をしないあたりがキモな作品となります。ただ、それが現実主義なのかと言うと微妙です。まあ、勇者だからと冒険に繰り出さないあたり地に足をつけているとは思いますが。
ただ、高校を卒業して大学入学の直前に召喚された一介の日本人青年としては、色々詳しすぎですね。まあ、そうでないと話が進みませんけど。現実主義というよりは理屈っぽい気はします。あとは異文化でもギャップがあるのに、異世界であまりギャップがないですね。言葉は勇者の謎能力のおかげで適当に変換されているようです。何そのチート。
しかし言葉によってはそのまんま伝わって現地人がナニそれ?状態になります。例えば、タコのようなものについては、ソーマには「タコ」と聞こえるし、ソーマが「タコ」と発生したものは現地人には現地語で聞こえるらしいです。しかし、概念が存在しないようなものはそのまま伝わるそうです。そういう記述があります。気にしなくて良いのでしょうが、どういう概念が伝わっていて、どういう概念が伝わらないのか分からないくらいなら、変な設定は要らないと思うのです。今後、活かされることがあるのでしょうか。
異世界人のソーマは召喚された勇者であることは皆が知っているので、どんなにソーマがこの世界では非常識だったり革新的なことを言っても、そういうものと思われるだけのようです。あまり異世界によるギャップによって摩擦が生じたり、反発されたりということが起きたり、それによって葛藤が生じたりはしないようです。そこが主眼ではないのでしょうが、そういうものとして受け入れるしかないようです。召喚自体はそんなにホイホイとされているようなものではなさそうですが、異世界人だからという理由で拒まれている様子はアニメも含めて今のところあまりないのが少し不思議です(もちろん、色々改革を進めることでの反発はありますが、それは異世界人であるソーマでなくても同じなので)。
ぼちぼち読んでいきます
まあ、文句も書きましたが、作品の方向性としては気に入っているので、続刊も読んでいきたいと思います。とはいえ、アニメ2期をやっている間は、その先までは進むつもりはあまりないので、他に安くなっている他作品とか読みながらぼちぼちとなる予定です。
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