ラノベ感想:ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編 10
2年生編もいよいよ3学期。堀北クラスが躍進した2年生編もいよいよ終盤に入りました。綾小路も着々と布石を打っているようですが、果たして堀北はさらに成長できるのでしょうか。
あらすじ
2年生の3学期が始まって束の間、新たな特別試験が発表される。「生存と脱落の特別試験」と銘打たれた今回の試験は、最下位クラスから退学者が出る内容。単に学業だけでなく、クイズのような様々な分野の問題で攻防を繰り広げる特別試験に、堀北クラスでも動揺が走る。
動き始めた一之瀬と龍園、堀北と坂柳はどう動くのか
二年生編も3学期となり、次なる特別試験が実施。今回は2つのクラスが攻防を繰り広げる特別試験。単純に学力を競うだけでなく、学業とは関係ないようなグルメやサブカルの問題も含むクイズのようなもの。そんな特別試験を背景に、各クラスの序列も動き始める。
コミュニケーション力があるのかないのかわからない綾小路
終盤で坂柳のことをあれこれと言ってた綾小路ですが、そもそもホワイトルーム出身でコミュニケーションの機会も少なかった綾小路が随分と分かったようなことを言っているな、と。もっとも、他人の観察と思考に関する洞察はホワイトルーム時代にもやっていたのでしょうね。
とは言え、軽井沢惠との恋愛ごっこについてはこんなことも言ってるので、なんと言うか綾小路だな、と。
その2人で過ごす日々が必要なのか不必要なのかを問われると、半々だと答える。
2年生3学期開幕 より
必要な理由としては、対人による会話を繰り返すことで、少なからずオレにコミュニケーション能力を与えてくれていること。これは未熟なスキルを磨く貴重な機会だ。
(中略)
一方、個のスキルを磨く時間が削られることはデメリットだ。コミュニケーションと恋愛、そして異性を解剖していくメリットを除けば、その他多くを犠牲にしている。
いや、まあ、その通りなのでしょうが…。メリットとかデメリットとかそういう話なのか、と。
動き始めた下位クラス、揺れ始めた上位クラス
挫折から立ち直りつつあった一之瀬がついに動き始めた感じ。そして、特別試験前半戦ではなすすべもなく下位に沈んだかと思われた龍園の逆襲。やはり、こうこなくちゃダメですよね。堀北クラスがバンバン力をつけるだけでなく、4クラスの拮抗。綾小路の狙いは読者の思うところでもあるかと。
盤石と思われたAクラスにも動きが見られ、それは一之瀬クラスや龍園クラスも同様。今後はリーダーを中心にどうクラスとしてまとまることができるのかが鍵となりそう。
今巻の中で龍園クラスの学力問題について「今までのツケ」みたいに言われてます。が、それを今言っても仕方ない訳で、それでも勝ちに行くなら今更勉強し始めてもAクラスにはなれないのですよね。その点は一之瀬クラスも同じ。正攻法では難しかったら得意分野を活かした搦手から攻めるもの一つの方法。そういう点では上位に入って少し安心して気が緩んだ感もある堀北の常識論を、下位に沈んだが故にこそ常識にとらわれない手を打ってきた龍園や一之瀬の動向が気になります。果たして、一度だけの奇策に過ぎないのか、現状を切り拓くのか。そこには綾小路も絡んできそう。彼にとっては、龍園や一之瀬が食い込んできた方がよいのでしょうし。
もっとも、坂柳や龍園はAクラスになることにこだわりがないというのも確かだとは思います。でも、それを言うならAクラスの特権と無縁な綾小路が一番Aクラスにこだわりがないのですよね。彼自身、決して「今のこのクラスでAクラスになりたい」なんてことは考えてなさそうなわけで。そういう意味では橋本の思惑は外れているように思います。彼が坂柳クラスに入ってもやることは今と変わらなそう。
そして、物語の最後の一言が不穏。
残された学校生活、周囲の記憶に残る存在となるための行動を始める。
覚醒の前触れ より
この章のタイトルである「覚醒」とは坂柳のことなのか、綾小路のことなのか。あるいは両方なのか。
坂柳もただの高校2年生だった
今までは綾小路に匹敵するのかもと思われた坂柳有栖。しかし、彼女もまた成長過程の少女でした。どんなに背伸びしてみても、自分のこともよく分かっていない1人の高校生。ここで自分というものを見つめ直した彼女もまた一段と強くなりそう。
なんかある種親しみやすさのようなものを感じたかも。今までは超越した存在かのように見え、実際そのように振る舞っていたのでしょう。そんな彼女もやはりただの高校生だったのですね。
結局ヒロインは誰?
アニメ1期がやってた頃、原作では綾小路が軽井沢と絡み始めた頃で、アニメは堀北をゴリ押し!みたいなことを言ってる人もいたりもしたような。
まあ、結局綾小路にとって他人は駒に過ぎないので、その点では軽井沢も堀北も同レベルな感じです。とは言え、クラスのリーダーとしては明らかに堀北を推しているのですが、ヒロインが恋愛対象のことだとすれば軽井沢はもちろん、堀北もヒロインではないでしょうね。今後、一之瀬や坂柳との関係がどうなるのか分かりませんが、彼女らもそういう意味でのヒロインたりえなさそう。
物語の鍵を握る人物という定義なら、堀北、坂柳、一之瀬でしょう。もちろん、特定の1人ではなくて彼女ら全員。綾小路視点が多いので群像劇というのはちょっと違う感じですが、綾小路という特殊な視点から見た群像劇というのが近そうな気がします。
大企業に就職するのはそんなによいことか
この学校は設定上、Aクラスで卒業するとどんな企業だろうと大学だろうと、就職や進学が可能。それどころか、今回の話の流れではスポーツ分野でもそれは有効らしい。まあ、作中にもあるように実力が伴わなければあまり意味はないですけど。
そんな中、堀北クラスでも学業についてはトップクラスの啓誠がこんなことを言ってます。
「Aクラスの特権って話なら、断然大手企業に就職するべきだ。露骨に能力が追いついていない場合は例外としても、人並みに働けるなら滅多なことじゃ解雇されない。入った者勝ちの世界に飛び込ませてもらうのが一番賢い使い方じゃないのか」
2年生3学期開幕 より
まあ確かにそうだし、ある意味正しいのですが。解雇されないこと=活躍できるわけでもなんでもないわけで。まあ、入り込んでしまえば確かにそれなりの給与水準と福利厚生が得られるので、正しい使い方というのは間違ってないのですが。まあ、この高校を出たのであればそれなりに評価されるのかもしれませんが、それでも高卒なわけで、それで大手企業でやっていけるかというと、それはまた別問題。
で、仮に大学に入ったとしても、そこでついていけないと意味がない。そういう意味ではAクラスの特権って使い所が難しい気も。もちろん、地力があって優秀な人材ならば使いこなせるでしょうが、そうでないと難しいような。実力はあっても機会が得られないような人に機会を与えるという意味では素晴らしい取り組みなのかな、とは思いますけど。
その点では人道的な問題を置いておくとホワイトルームの方が需要がありそうな気はする。企業などから見れば、Aクラスの末端生徒よりはBやCでもリーダー役やその近くにいた生徒を取りたいんじゃないかと。
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