ラノベ感想:陰の実力者になりたくて! 05

読書,異世界,逢沢大介,陰実

元々目をつけてはいたものの後回しに。それがアニメ化されたのを見てコミカライズ→原作と手を出して5冊目。現時点の最新刊までようやく追いつきました。実は年末年始のKindleのキャンペーンに釣られて4巻、5巻を買ってあったのですが、他の作品分も含めて積読消化が完了しました。

あらすじ

オリアナから異世界(シドの居た日本)へ行って戻ってきたシドは学園へ戻る。その学園では生徒が連続して失踪する事件が発生。「真実は一つ」ムーブをやりたいがために事件の調査に乗り出す。その裏には教団が目論む魔神復活の陰謀が進行していた。しかし、魔神復活を考えていたのは教団だけではなかった…。

一枚岩ではない「教団」、そしてシャドウガーデンも…

「教団」にも内部の序列や派閥があることは今までも語られてきたかと想います。が、その中でも前の4巻あたりから「教団」の派閥事情が表に出始め、今回はその一派の首領であるフェンリルが登場。今まで出てきた「次期」ラウンズたちは割と小物感漂う感じでしたが、さすがに大派閥の幹部たるフェンリルは意外に硬派でした。

終わらない精進は厨二の夢

今回、決戦の最後でのフェンリルとシャドウの会話がよかったです。シャドウに破れ、「最後に武の頂を見た」ことに感謝するフェンリルに対して、シャドウは武の頂など存在しないと断じます。

「頂の先には、さらなる頂がある。それだけだ‥‥‥」
「なんと‥‥‥」
「そこが頂だと思ったとき、人は歩みを止める」

終章 それが手に入るなら世界を滅ぼしてもいい! より

とてもよいセリフです。自分もシステム屋さんとしてそれなりに仕事はしてきましたが、やはり生涯勉強の世界です。もうこれくらいでいいかと思った時が引退の時でしょうか。厨二たるもの、最強を目指すのに妥協があってはいけませんよね。

シャドウは「個人としていくら強くなっても軍隊には勝てない。核兵器にも勝てない。」ところから「自分が核になればよい」とか考えてしまう人間です。それが必殺技たる「アイ・アム・アトミック」なわけですが、それを果たしてもなお彼は満足していないのですね。
彼としては「陰の実力者」に憧れ、そうありたいと思っていますが、その反面、そういう存在にはなれないとも考えている矛盾の人です。だからあくまで「ごっこ」をしているつもり。それが皮肉にも限りなく「陰の実力者」になっているという。

シャドウガーデンも一枚岩にはなれないのか

シャドウガーデンもある意味不思議な組織です。シャドウの「設定」をもとに生まれた組織ですが、シャドウ的には「ごっこ遊びに付き合ってくれる仲間」という認識。さすがに、(欠番はあるのかもしれないですが)666番までいる組織という時点でおかしいと思わないのかとも感じます。

その組織を実際に運営しているのはアルファとガンマ。シャドウ自体は君臨すれども統治せず、ではありませんがシャドウは主に七陰などに「陰の叡智」を与えるだけで組織運営に対しては全く関わっていません。方針を示すこともなく、ただ(何かのムーブで)シャドウが発した言葉をアルファたちが勝手に解釈して「彼はこう考えているに違いない」と思い込んでいるだけ。当然、個々人の思惑に違いが出てきますよね。七陰とそれ以外のナンバーズなどの実力差は大きいので、七陰が組織の中心にいるわけです。が、その七陰にはそれぞれ思惑があるわけで。

組織を運営しているとは思っていないシャドウに責任は問えないものの、ある意味非常に危うい組織です。例えば、アルファは「教団」を殲滅すべきと考えているようですが、その後のことを考えているのか?フェンリルの言うように「教団」に代わって裏から世界を支配するのか?それが「教団」同様に腐敗したらどうするのか?という視点があるのかないのか。その点であくまで「陰の実力者」を目指すシャドウとは相入れない気もします。

そして、実際に七陰の一人であるゼータは独自に動き始めました。実際問題、七陰には席次はあるものの上限関係は意外に曖昧。最初の一人であるアルファは実力も組織運営の力もあるものの、他の6人が必ずしも彼女に忠誠心を持っているわけではなく、あくまでシャドウという存在を中心にまとまっているだけなので。ただ、アルファにしろ、ゼータにしろ、シャドウの「陰の実力者になりたい」という本心を本当のところでは理解していない感じです。それが今後の物語にどう影響するのか。

アニメについて

結構オリジナル要素を入れていたアニメ陰実。個人的にはアウロラとシャドウの闘いのあたりまではよかったですが、その後はオリジナル展開、演出が次第に増えてきて、なんか「あれ?」って感じでした。とくにアニメ最終回。確かに見応えはあるのですが、個人的にはちょっと違うようにも感じました。

別にアニオリが悪いとは言わないし、媒体が違う以上は見せ方も異なるのはわかりますが。一般人もいる都会で延々と戦い続けるとか「陰の実力者」じゃないんじゃないかと。最後にシャドウも目立ちすぎたみたいなことを言ってましたけど。

公式サイト

既刊感想

2023-11-23読書ライトノベル,異世界,逢沢大介,陰実

Posted by woinary