ラノベ感想:陰の実力者になりたくて! 03

読書,異世界,逢沢大介,陰実

元々気になっていたものの他に読んでいるシリーズもあったのでAmazonの買い物リストにためてました。それがアニメ化されたのでアニメを見つつ、コミカライズにも手を出し、ついに原作まで。その原作の3巻目の前半でアニメでは15話以降の話になります。

あらすじ

前半は赤い月編。ブシン祭も終わりシドの将来を心配したクレアは、実績作りのために「血の女王」討伐作戦にシドを連れていくことを思いつく。しかし、シドはその舞台である無法都市でクレアの目を盗んで一人で出歩き、財布をスリまくり。しかし、ちょうど「赤き月」で活性化したグールや吸血鬼たちに連れ去られたと勘違いしたクレアは、最古のヴァンパイアハンターを名乗るメアリーとともに「血の女王」の拠点である紅の塔へ向かう。そこで待っていたものは…。

後半は経済戦争編。シドは無法都市の白の塔の支配者「妖狐」ユキメから、振興のミツゴシ商会と既存の大商会連合が一触即発であり、両者を共倒れさせてユキメの雪狐商会で漁夫の利を得ようと誘われる。シドは「裏切っているように見せかけて、実は救済策を用意していた」ムーブをしたいがためだけに、ユキメに協力するスーパーエージェント、ジョン・ドゥとして暗躍する。その大商会連合の背後には実は「教団」による大商会連合を利用したミツゴシ潰しの思惑が隠されていた…。

シドの勘違いでなんとなくうまく収まる

今回も勘違いとすれ違いが暴走して、どうしてなんとなくうまくまとまるのかが不思議な陰実世界。しっかりと立てたフラグの回収もしていて、本当にシドは世界中の男性の敵です。最後にはほとぼりが覚めるまで行方をくらますクズっぷり。実際にはそんな必要はどこにもなかったのですが。

無法都市より自由なシド・カゲノー

前巻のブシン祭編で王を失い王女が逃亡したオリアナ王国は大変なことになっており、内乱突入が噂される状況。それを聞いて「内乱に介入したい」とウキウキしている我らが主人公、シド・カゲノー。

「陰の実力者」になるための鍛錬は欠かせないが、仕事とか将来とかには無頓着な彼は「一生暮らせるだけのお金が手に入れば仕事なんてどうにでもなる」という考え方。別に仕事をしたくないというわけでもなく、その時の気分でさまざまなモブ職業(作中で名指しされた職業には失礼な話だが)を経験できるということの方が彼にとっては重要。その点ではやはり仕事がしたいとかしたくない以前に、実力を隠して普段はモブ職業の一般人を装うことが目的なのでしょう。昔の戦隊モノの司令官が喫茶店のマスターを隠れ蓑にしていたように。もっとも、クレアはそういうモブ職業に就いてほしくはないようですが。

そのための資金稼ぎとして目をつけたのが無法都市。中世的世界なためか人権の考えはあまりなく、特に犯罪者の更生とか一切考えてなさそうな世界なので、無法都市ならスリ放題という考え方がもうぶっ飛んでます。一応、現代日本での常識を知っているはずですが、本当に自分に重要なもの以外を切り捨てていくとこういう人間になってしまうのでしょうか。ミステリだったら陰の実力者というよりは探偵役に糾弾される犯人ですよね。

後半の経済戦争編でもノリノリでスーパーエージェント、ジョン・ドゥを演じるあたりは一種の病気のようなものかと。本人は200年とか300年とか生きるつもりらしいですが、何か事件がないと退屈してしまう迷惑な陰の実力者になりそう。

ヴァイオレットさん、再び

赤い月編ではヴァイオレットさんこと、災厄の魔女・アウロラが再登場。聖地を吹っ飛ばした件で消えてなくなったかと思いきや、意識だけの存在として世界を漂っているよう。それって、幽霊?

クレアの命の危機に登場して結果的に命を救いますが、クレアにややこしい属性がついてしまったわけで。これからどうなるのでしょうね。

ちなみにこの世界は魔力はあっても魔法はないよう。魔力はイメージ的には「気」のような感じのもので、分かりやすい火の魔法や水の魔法みたいなもの(ファイヤーボールとか)はないし、精霊魔法とか神聖魔法もないらしい。アウロラがエリザベートに対して「魔女に対しては飛び道具を使うのが正解」と言ってましたが、その飛び道具的なものも魔法で何かを生み出しているわけではなく、自身の血を使っているようなので、本気でいわゆる魔法はないようです。

聖都でのシャドウとアウロラの対戦でアレクシアがこれが古代の戦技か?と驚いているので、今はブシン祭のような魔力で身体を強化した上での剣などの武具による戦いが一般的なのでしょう。一応、銃器はあるようですけど。

そのクレアの体を一時的に拝借したアウロラですが、エリザベートに対しては時間稼ぎしかできませんでした。悪魔憑きだったので魔力は一般人よりは高いでしょうし、シドの影響でそれなりに鍛錬もしているだろうクレアでもアウロラの全力を引き出すには足りないわけで、そのアウロラと制限付きであっても互角以上に戦えるシャドウは、やはりこの世界では圧倒的な存在のようです。

ユキメと月丹

例によって趣味と実益を兼ねた盗賊狩りの一環でユキメや月丹とも関わっていたシド。もうお約束ですね。この調子であちこちでフラグを立てては回収しているのですから。

月丹はある意味シドに近いところがあります。まあ、シドと敵対する教団側の関係者の多くは月丹同様に借り物の力を得る方向に進むので、他のものをすべて捨てて鍛錬するシドとは相容れないのですけど。

大切なものを守るために力を得るつもりだったのに、その大切なものを犠牲にして力を得た月丹。目的と手段が入れ替わってしまったが故の悲劇。もっとも、シドについても「陰の実力者」になって何かをなしたいというよりは、「陰の実力者」になることが目的化している(しかも、その定義も実は曖昧で当人の気分次第)なので、実は「教団」関係者と本質はそう変わらないのではないかと。

ミツゴシ商会とシャドウガーデン

経済戦争編で絶対的な経済力を結果的に得ることになったミツゴシ商会。裏社会は雪狐商会を通じて支配しようとしているわけで、ある意味「教団」に匹敵する組織にまでなっているよう。ただ、その構成員は設定上悪魔憑きであった女性に限られるわけで。ナンバーズに欠番があるのか分かりませんが、欠番がないとすればローズ・オリアナ加入時点で666人の構成員がいることに。

ただ、ミツゴシは少なくともミドガル王国、オリアナ王国、ベガルタ帝国に複数の店舗を持ち、さらに銀行など関連団体もあるわけで。600人やそこらで人手が足りるのでしょうか。アレクサンドリアでカカオやなんかを栽培している人手もいるわけですし。

まあ、ミツゴシやマグロナルドの末端従業員はシャドウガーデンではない一般市民が含まれるのかもしれませんが(Wikipediaのミツゴシ商会の説明では、スタッフ全員がシャドウガーデンのメンバーと記載されてますが)。

なおWikipediaにはシドは本人に自覚がないが事実上陰の実力者であるとともに、実は傀儡で真のボスがいる構図でもあると記載されています。この真のボスとはシャドウガーデンの事実上のリーダーであるアルファのこと。ただ、個人的にはちょっと違うかな、と。

確かに実質的な指導者はアルファなのは確か。でも、別にアルファがシドを操っているわけではないのでシドがアルファの傀儡というのはおかしいですし、アルファが真のボスとも言えないです。シャドウはある意味象徴天皇的な存在で、アルファは総理大臣という考え方の方が近いかと思います。憲法的なものがあるのかわからないので立憲君主制とは言い難いですが、それに近いような統治体制に見えます。まあ、シャドウはそれこそ「君臨すれども統治せず」ですけど。シド的にはシャドウガーデンはそういう「ごっこ遊び」という認識であって、本当に組織が存在するとは思ってないわけなので。

今後は

とりあえず3巻まで買ってあったのですが、4巻以降は未購入。キリもよいのと、他のシリーズの新刊や他に買っていた本もあるので、ちょっと寄り道して4巻以降を読むのはちょっと先になる予定。

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既刊感想

2023-11-23読書ライトノベル,異世界,逢沢大介,陰実

Posted by woinary