ラノベ感想:ただ制服を着てるだけ
特設サイト曰く、ニセモノJK×ワケアリ社畜、いびつな二人の心温まるラブストーリー。と言うか、恋愛にも生きていくことにも不器用な二人の友達以上恋人未満の擬似家族物語、と個人的には受け取りました。
あらすじ
アラサーの社畜、堂本広巳はあるきっかけでJKリフレに週一で通う程ハマってしまう。指名するのはいつも「あゆみ」。しかし、性的なオプションは一切つけず、ただゲームをしたり、だべったりするだけ。それだけで満足していた広巳だが、ある日「あゆみ」こと藤村明莉が転がり込んでくることに。これをきっかけに二人の関係や生活が変わっていく…。
ラノベだけど大人のラブストーリー
第13回GA文庫大賞の金賞受賞作品。同年度は大賞受賞作がないので、最も優れた作品の一つということになります(金賞作品は本作含めて2作品でした)。
ラノベの主人公が10代だったのは昔の話で、最近は高齢の主人公も多くなってきました。高齢と言っても本作は男の方はアラサーで、女子は19歳ですけど。ラノベ自体がもはやティーン向けではなく、ラノベを読んでいたおっさん向けになっているのでしょうか。ただ、公式の謳い文句の大人のラブストーリーと言われると、うーんと考えてしまう。確かに年齢的には大人だけど、やってることは大人じゃないし、そもそもラブストーリーなのかと言うのも微妙。いびつな二人が運命のようにピースがピタッとハマってしまった感じ。
せっかくKindle Unlimitedに加入して毎月お金を払っているのにあまり活用していないな、というわけで選んだのがこの1冊。読書メーターさんのランキングでラノベ部門のトップ5に入っていることもあって読んでみました。
ニセモノJK
実際には19歳で、JKリフレで働いていることから「ニセモノJK」である藤村明莉。本格的?な風俗でやっていく覚悟もなく、かと言って他にできることもなく、惰性でニセモノJKを演じ続ける日々。そこで出会ったのが堂本広巳。なんだかんだと彼の元に転がり込むことになるのはお約束。
ワケアリ社畜
コンビニ店長で公式サイトでワケアリ社畜扱いされている堂本広巳。ワケアリ具合は今巻ラストの方で明かされるのでここには書きません。ただ、社畜かというと、あまり本作の描写自体からは社畜っぽさを感じられません。著者の方の経歴等存じ上げませんが、社畜経験がない方なのか、サラリーマン=社畜みたいな考え方なのかのどちらかかと感じました。世の中的にはどうなのでしょう。社畜という場合、もうちょっとブラックさがないと。まあ、バイトで入った当時は働きまくってた感じでしたけど、店長になった今は普通に責任者としての責任はありそうですが、そこまでの気がします。
まあ、社畜描写が売りになるような作品ではないのでしょうが、なんか社畜も軽くなったものだなと感じます。明莉が実際のJKではなくて、記号としてのJKであるように、記号としての社畜なのかも知れません。
まあ、社畜なんて俗語なんで辞書にも定義なんてないでしょうし、公式が社畜といえば社畜なのでしょう。一応、Wikipediaの社畜の項から、定義っぽいものを引用します。そういえば、作中では本人含めて誰も広巳を社畜とは言ってないか。念の為、Kindleで検索しましたが、本文中には「社畜」という単語は一切ありませんでした。単に公式サイト書いてる人(編集さん?)が煽りで書いただけみたいです。個人的にはちょっとこの煽りはセンスないと言うか、誤解を招くと言うか…。
社畜(しゃちく)とは、主に日本で、社員として勤めている会社に飼い慣らされ、自分の意思と良心を放棄し、サービス残業や転勤もいとわない奴隷(家畜)と化した賃金労働者の状態を揶揄、あるいは自嘲する言葉である。 「会社+家畜」から来た造語かつ俗語で、「会社人間」や「企業戦士」などよりも、外部から馬鹿にされる意味合いを持つ。
社畜 – Wikipedia
あとはまあ、直営店でもないコンビニでバイト上がりの正社員?ってのもちょっとよく分かりませんが、コンビニ業界ではこれが普通なのでしょうか?まあ、企業がフランチャイズしているコンビニもあるので、そのフランチャイズ先の正社員になったのですかね。
終盤の独白があって、明莉が絡まれたシーンが伏線だったと分かりますが、そういう経験をしていたらあのおっさんに対してもうちょっと違う想いを抱きそうな気もするのですが、事勿れな人物として描かれているためか、とても淡白に感じます。経験ゆえに淡白になってしまうのでしょうか。
大人になれない大人の恋愛ごっこ
何となく全てが「そういう設定です」っていう感じがしてしまう本作品。終盤の広巳が明莉と対面する場面は盛り上がったのですが、それだけで続刊を買うかは少し考えてしまいます。またKindle Unlimitedなら読むかと思いますが。割と高評価っぽかったので少々期待し過ぎてしまったでしょうか。
どうしても比べてしまうのが「ひげひろ」です。アニメも原作もちょうど完結したところですし、シチュエーションも似ています。もっともあちらは違法でこちらは合法ですけど。
あちらの男主人公も広巳とは違う意味でちょっとおかしい人と言うか、あれに比べれば広巳はヘビーな経験をしているけどかなり真っ当な人ではあります。でもまあ、やっぱりおかしいか。
正直、あちらは誰と誰がくっつくのが良いかみたいな話はひとまず置いておいて、沙優とくっつけばいいじゃんと言う感じですが、本作はこの二人がこのままくっ付いたらダメじゃないかという予感がすごくします。
年齢的には大人、特にアラサーの広巳は間違いなく大人なのですが、かの経験から家族観、恋愛観が大人になりきれていない感じがします。そんな二人が確かにお互いを求め合うかのように出会い、離れがたくなってきている感がありますが、それは果たして恋愛なのか。
そんなわけで、最後の引きがアレだし、売り上げ的にも良さそうなので続刊が出そうですが、結局気になって買ってしまいそうです。
公式サイト
特設サイトは動画再生があるのでご注意ください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません