ラノベ感想:りゅうおうのおしごと!16
15巻ラストからの続き。ただ、間に15.5が電子限定で配信されたのですっかり15巻のエピローグの一件を忘れてました。いよいよあいのタイトル戦です。
あらすじ
あいのタイトル戦初挑戦が決まり、エターナルクイーンこと釈迦堂里奈との5番勝負が始まる。順調に2勝したあいだったが、これで決めると挑んだ大阪に凱旋しての三局目で負けてしまう。
一方、八一はあいとの和解を望んで近くまでは行くものの、なかなか遭うきっかけが掴めない。最終対局までもつれた5番目であいにアドバイスしたい八一は休憩の清掃時にある想いを込めて担当者にちょっとしたことを頼み込むが…。
釈迦堂里奈がエターナルクイーンである理由と彼女の半生が明かされる。果たして神鍋歩夢の師匠への恋心の結末と釈迦堂里奈の幸せ、そしてあいのタイトル挑戦の結果はどうなるか?!
様々な関係をリセットして再構築する16巻
冒頭にも書いた通りにすっかり15巻ラストの歩夢から里奈へのプロポーズの件を忘れていました。メインストーリー的な前巻の15巻が2021年9月なので半年の間を挟んでいる上に、間に15.5巻を挟んでますから。
そんなわけで、あいのタイトル戦をメインの話にしながら、その裏で釈迦堂里奈の半生と想い、そして歩夢との関係が描かれます。そこに歴史があるが故に裏もあった将棋界の話も絡んできます。
熱い2つの戦い
本巻では2つの戦いが描かれています。一つは女流名跡のタイトルをかけたエターナルクイーン、釈迦堂里奈と雛鶴あいの5番勝負です。先に勝ち越した方がタイトルを得ることになります。当初は順調にあいが勝利を収めるものの、万を持して挑んだホームである大阪での3局目で惨敗したあと、ずるずると連敗を重ねての最終局。
そしてもう1戦が名人に挑んで負けた直後の山刀伐尽と神鍋歩夢のA級トーナメントの1局。こちらもとても熱い。研究熱心で勝つ為なら新しい戦法もどんどん取り入れて変わっていく山刀伐と、戦法を変えない歩夢。「名人の下位互換」と言われてしまう山刀伐と「次世代の名人」と呼ばれる歩夢の新旧名人対局とも言えます。まあ、この一戦のおかげで八一の著書が急に売れ始めるという余録もありましたが。
それぞれの結果については、おそらく想像もつくと想いますし、本巻の肝の部分でもあるので詳細や結果は割愛します。
将棋界の歴史
この2戦を表にして、裏には将棋界の様々な確執とそれに弄ばれた人間たちのドラマも展開します。正直、お腹いっぱい。その中には釈迦堂里奈や八一の師である清滝鋼介も絡んできます。
さらに、東京と大阪の新旧将棋会館の立て替えとか、新しい女流タイトルの創設といった話も絡んできて、将棋界も色々変わりつつあることが示されます。エターナルクイーンがなぜエターナルクイーンであるのか、どういう想いでそのタイトルを保持しているのか。そういった過去から続いてきた想いにも話が及んでいきます。そして、世代交代の時期であることも。
黒衣の少女
本巻のプロローグは、上記の対戦とは関係ない、もう一人の「あい」である夜叉神天衣の対局から始まります。実は、あいのタイトル戦と同時進行していた話ですが、プロローグでの対局冒頭と終盤のあいのタイトル戦完了後の間は一切描かれていません。16巻の公式あらすじ紹介でも天衣のことは一切触れられていません。
その裏で、東西将棋会館の建て替えや新しい女流タイトルの創設、クラウドやVRを活用した将棋対局やら、それに特化した住まいの提供といったあたりで暗躍しています。もちろん、それらの案件の表の顔は世話役兼護衛である池田晶であり、上の話のどこまでが天衣の発想なのかの詳細は触れられていません。
冒頭での思わせぶりな発言やあからさまな伏線はありつつも、途中は上に書いたような熱い話が続いており、天衣自体は登場機会もほぼない(途中電話で八一と話したくらい)ので油断してました。
そして、天衣がすべて持っていきました。
これについては人によって評価が分かれると思うし、受け止め方の大小はあると思いますので、あくまで自分個人の一感想であることはお断りしておきます。もう今回の熱い物語の余韻も何もかも全てを天衣がさらっていって、天衣一色に染められてしまいました。
物語の主人公は八一であり、その弟子である二人は「二人のあい」として対照的な存在として描かれています。陳腐な表現ですみませんが、光サイドがあいで闇サイドが天衣です。八一にとっての天使と悪魔と言っても良いように思います。そして自分はどうしようもないくらいに天衣に惹かれます。きっとその道はないのは分かっていても。ここまで心魅かれたのは「デートアライブ」の時崎凶三以来でしょうか。なんとなく、二人を重ねてしまいます。
まあ、あいはあいで単純にライトサイドとも言えないヤンデレ成分を持っているので、本当の意味の天使はシャルちゃんだけかもしれません(ロリコンではありません)。
余談:将棋とコンピュータ、クラウド
本作でも登場してますし、現実にも活用されているようですが、現状の将棋におけるコンピュータ活用の実際はどうなのでしょう。作中では、研究用に結構なスペックの自作PCを用意している人もいるようですが。小学生のあいは流石にそんな高スペックPCを所持していないと思いますが、ジンジンやたまよんに借りてるのでしょうか。実はPythonあたりをバリバリ使いこなしているのかもしれません。
タブレット片手にクラウド上のVDIにアクセスする黒衣のお嬢様が思い浮かんでしまいました。で、晶に「お嬢様、今月のAWSの課金アラートが来てます!」とか泣きつかれたりして、クズに回しておけとか指示してたりして。クズはなんか最近支出が多いな…くらいの認識しかなかったり(経済観念なさそうだし)。あ、ロリホームの経費で落としてるのか?(流石に雇用関係ないだろうし、変な利益供与や税逃れを疑われそうだが、クズ竜王とパートナーシップ契約してサーバ利用させている体にすれば、それを天衣が使っても問題なしと言い張れるかも)
そんな中でクラウドの話も今巻で出てきますが、実際問題、相性がいいような気はします。手元に高価なPCを置いておいても使わない時もあるわけだし、棋譜データのバックアップだって必要なわけで。
それならクラウド上に環境を用意しておけば必要な時だけ使い、パワーが必要ならスケールアップし、しかも地方での対局などでもパソコンやデータを持ち歩かなくてもどこからでもアクセスできるし、バックアップも色々やってくれるというわけで、実際にプロなら活用されてそうですが。プロやハイアマチュア向けにそういう商売があっても良さそうな感じもします。もちろん、かなりニッチなのでブルーオーシャンのうちは良いですが、レッドオーシャンになったら死屍累々になりそうですが。まあ、この程度のことは誰でも思いつくのでもう存在していそうです。
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