「鎌倉殿の13人」第43回・補足
源平合戦の時代〜鎌倉幕府成立の時代を描く大河ドラマ「鎌倉殿の13人」も第43回。それぞれの思惑で動き始める鎌倉。悲劇に向けてついに最後の歯車が動き出しました。頼朝が征夷大将軍になった時を彷彿とさせるお茶目な政子の姿を見た直後に、ついに最後のトリガーが引かれてしまいました。いよいよ終盤に向けて動き出しましたが、例によってツッコミを入れていきます。
義時が何か決めると逆方向に転がり始める件
思えば、義時が何かを受け入れると、その逆方向に全力で動き始めるような気がします。一番最近では和田義盛と和解したと思われた直後には、全力で和田合戦へと歴史は突き進み始めました。時政追放も和解の道が見え始め、義時が妥協するとこれまた追放への流れへと進み始めます。そして、畠山重忠の一件も。
昔の純粋だった義時から暗黒面に落ちたとも言われる執権義時ですが、最近はもはや死神にさえ見えてきました。
本気で実朝をバックアップしていた政子
少し真意を測りかねていたのですが、政子は本気で実朝の想いを実現したかった様です。それはもちろん、実朝が政治に関わることで頼家の二の舞になることを恐れたわけですが。しかし、頼朝の血筋はそんな安穏とした生活は受け入れ難かった様。
実朝はもちろん、その血は公暁にも流れていたということで、最悪の事態へと突き進むことに。ダースベーダー義時が恐れていたように、血筋を残すことは禍根を残すことだったということがはっきりしてしまいます。そもそも、常盤御前の嘆願で自分が生かされたがために平家滅亡したことを熟知していた頼朝は一切容赦はしませんでした。それが故に大姫の悲劇を招いたわけですが、悲劇を避けようとして清盛と同じことをしてしまった政子は、子も孫も失う結果となってしまいます。果たして頼朝が正しかったのか、政子が正しかったのか、それとも頼朝の行いによって子々孫々まで呪われていたのか…。
ついに動き出す三浦義村
しかし役者でしたね、義村。直前ではさも板挟みに耐えかねるように「友を裏切れない」と言っていた直後、しれっと「北条を許すな」と。明らかに公暁を焚き付けにかかってます。実際、実朝事件の黒幕については昔から色々言われています。かってNHKの歴史番組でも取り上げられました。先日も比企能員役の佐藤二朗が所長を務める「歴史探偵」という番組でも黒幕は誰だったのか?という話を取り上げたばかり。もっとも「公暁一人でこんなことができるはずがない」からの「色々検証したけどやっぱり単独犯でした」というオチにはずっこけましたが。
「歴史探偵」でも昔から言われている北条義時黒幕説と、三浦義村黒幕説を取り上げていました。が、結局三浦義村黒幕説については、北条政子の存在を無視できない以上、その対策が抜け落ちている義村黒幕説は成り立たない、という理屈で却下されていました。ちなみに、この回のゲストは「鎌倉殿の13人」の歴史考証を務める坂井氏です。義時説も義村説も却下されたために消極的に単独犯という結論になったわけですが、ちょっと強引すぎると言うか、あまり納得いかない内容でした。
ちなみに、公暁が参籠していた時の稚児は、義村を父上と呼んでいた様でしたのでおそらく後の三浦光村、駒若丸かと思います。彼は公暁の門弟という立場で出家していましたが、実朝事件の後で還俗しています。
ただ、策士とも謀略家とも言われる三浦義村ですが、どうも「鎌倉殿の13人」では行き当たりばったりな行動に見えるのが残念なところ。和田合戦でも巴御前の機転で起請文を書かされて、危うく和田方につく羽目になるところでした。
今回も三浦が成り上がるにはこれしかないと言ってましたが実際には逆。実朝事件では最終的に政子に与し、承久の乱も乗り越えて、一時はかなりの権勢を手に入れています。ある意味、常に正しい方についてきたわけです。ただ、その世渡り術は子の泰村、光村には受け継がれなかったようで、彼らの代で三浦は北条(というより安達)にしてやられて表舞台から退場します。
和田合戦といい、実朝事件と言い、実は義時と義村は共謀していたのではないか、と思わないでもないのですが、その辺りは機会があれば。
フラグを立てる源仲章
上皇の親王を次の鎌倉殿として受け入れる話が決まった後、義時に対して勝ち誇る源仲章。これって完全に悪役キャラの死亡フラグですよね。実朝事件で仲章は巻き込まれてしまうわけですが、そこへの伏線の様にも見えます。
ついでに、伊賀の方(のえ)にまでちょっかいを出してましたが、あれは何のつもりだか。仲章はどうも義時を色々意識している様ですが、何か因縁があったのでしょうか。
実は京の方が合っている?北条時房
北条一族内では「空気読めないマイペースの弟」扱いの北条時房。今回も実時の「大事な話」の際に余計なことを言って場を凍り付かせます。その後、「13人目」として公暁が入ってくるのは意味深ですが。
その時房、いやいや政子の付き添いで京に行きますがそこで上皇と出逢います。あんなやりとりで合ったかどうかはともかく、時房が上皇の前で蹴鞠を披露したのは事実で、上皇に気に入られた時房は出仕を命じられたとされています。
「鎌倉殿の13人」では北条氏に対して「坂東の田舎者」扱いで嫌っている様ですが、それはあくまで北条時政、義時父子に対してだったのでしょうか。前回、慈円も「似たもの同士だから嫌いなのでは」と発言して上皇の怒りをかってましたね。
政子の前では「京は肌に合わない」的なことを言っていた時房。後の承久の乱後は六波羅探題として在京します。上皇に気に入られたりと、実は鎌倉よりも肌に合っていたのではないかという気も。
「鎌倉殿の13人」では頼りない弟枠の時房ですが、実際には義時や政子の死後は北条家の長老として泰時と共に、時に泰時と対立しながら幕府を支えることになります。決して、頼りないだけの人物ではないわけです。
「鎌倉殿の13人」では実朝事件をどう描くのか
そもそも謎が多く、真相が不明な実朝事件。頼朝の死や、富士の巻き狩りでの事件など、源氏関係は色々不明なことも多いです。その一因が、幕府の公式歴史書である吾妻鏡が北条得宗に都合の良い話を作っていること。そのため「歴史探偵」でも取り上げられた各種黒幕説(北条義時、三浦義村、後鳥羽上皇、北条と三浦の共謀)と単独犯説(「鎌倉殿の13人」の歴史考証の坂井氏も単独犯説)が入り乱れています。
そこに三谷脚本がどういう「回答」を用意するのか楽しみです。今の流れからだと、義村黒幕説っぽい流れですが、義時がフラグ名人源仲章を意図的に巻き込みそうな感じもあるので、次回も目が離せない感じです。
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